新光US-REITオープン(通称:ゼウス投信)は米国リートに投資を行いながら高い配当金利回りを出していることで有名な投資信託です。
リートは投資家から集めた資金を不動産に投資をして、得られた収益をほぼほぼ全て投資家に分配することで法人税を免れる仕組みとなっています。
そのため、株式よりも高い4%~5%の配当(分配金)利回りを狙うことが出来ます。
→ 私募ファンドとREITの違いは何か?仕組み/スキーム/私募不動産ファンド/ヘッジファンド/プライベートエクイティ
ゼウス投信は現在2022年10月時点で基準価格が2200で月の分配金が25円なので年間300円とすると配当金利回りは驚異の13%という水準になります。
私が分析してきたリートの利回りはおろか、それ以上の8%程度の配当金利回りをだすMLPよりも高い利率となります。
まずは、結論から申し上げると、ゼウス投信は資産を大きく失う可能性のある投資信託となっています。
本日はゼウス投信の問題点について紐解いていきたいと思います。
(個人的に、リートは景気サイクルに翻弄される商品ですので長期安定には向かないと思っています)
【2023年・国内和製優良ヘッジファンド】おすすめ投資先ランキング〜リスクを抑え安全・着実に資産を増やせる運用先(投資信託などアクティブファンド含む)を紹介。
【ゼウス投信】新光US-REITオープンの特徴とは?
まずゼウス投信とはどのような投資信託であるかという点についてお伝えしていきたいと思います。
ファンド・オブ・ファンズ形式で運用
ゼウス投信はファンド・オブ・ファンズ形式で運用が為されています。
要は米国のリートに分散投資を行うことにより安定的なリターンを出そうとするファンドということです。
最新の2023年4月度の運用報告書によると構成銘柄全体の加重平均配当利回りは3.59%となっています。
あれ、ゼウス投信の配当利回りは14%のはずなのに辻褄が合わないぞ?
と疑問に思った方は非常に鋭いです。この点については後程お伝えしたいと思います。
ベンチマークはあるのか?
ゼウス投信は市場平均に対してプラスのリターンを確保することを目指すアクティブ型の投資信託です、
→ アクティブ運用型とパッシブ運用型の投資信託のどちらが優れているのか徹底比較!インデックス投資は本当に最強なのか?
基本的にはアクティブ型の投資信託は比較対象としてベンチマークとなるTOPIXやS&P500のようなインデックスを設定しています。
ゼウス投信はベンチマークをFTSE NAREIT All Equity Reitとしています。
The FTSE Nareit All Equity REITs Index is a free-float adjusted, market capitalization-weighted index of U.S. equity REITs. Constituents of the index include all tax-qualified REITs with more than 50 percent of total assets in qualifying real estate assets other than mortgages secured by real property.
<引用:NAREIT>
つまり、全体の米国リート市場の時価総額の50%以上を網羅した時価総額加重平均指数ということですね。
ゼウス投信の業種別比率とポートフォリオ
ゼウス投信の業種別の構成比率は以下のようになっています。業種別構成比率の推移は以下となります。
直近住居の割合を減らし続けているのが分かりますね。
2023年7月 | 2023年4月 | 2022年12月 | 2022年9月 | 2022年7月 | 2022年2月 | |
住居 | 19.8% | 19.4% | 19.2% | 24.90% | 24.7% | 27.70% |
インフラ | 12.2% | 12.5% | 17.3% | 20.80% | 18.8% | 17.40% |
産業施設 | 18.3% | 12.2% | 13.2% | 12.60% | 13.2% | 15.20% |
医療施設 | 12.0% | 12.2% | 8.9% | 10.90% | 10.3% | 12.70% |
商業・小売 | 11.6% | 12.0% | 12.8% | 12.00% | 11.0% | 8.00% |
データセンター | 8.0% | 7.1% | 7.3% | 7.00% | 5.5% | 6.00% |
特殊施設 | 1.4% | 6.7% | 8.6% | 5.10% | 6.8% | 4.80% |
貸倉庫 | 4.5% | 4.6% | 5.1% | 4.30% | 4.6% | 2.60% |
オフィス | 3.7% | 3.7% | 550.0% | - | 2.7% | - |
ホテルレジャー | 3.5% | 3.6% | 2.2% | 2.00% | 0.4% | 3.20% |
森林 | 0% | 0.0% | 0.0% | 0.40% | 2.0% | 2.20% |
具体的な銘柄の推移は以下となります。入れ替えている銘柄もあれば、そのままの銘柄もあるという感じですね。
2023年7月 | 2023年4月 | 2022年12月 | 2022年7月 | |
1 | プロロジス | プロロジス | プロロジス | アメリカンタワー |
2 | アメリカンタワー | アメリカンタワー | クラウン・キャッスル | クラウン・キャッスル |
3 | リアルティ・インカム | リアルティ・インカム | デジタル・リアルティ | プロロジス |
4 | WELLTOWER | WELLTOWER | VICIプロパティーズ | UDR |
5 | UDR | VICIプロパティーズ | アメリカン・タワー | WELLTOWER |
6 | AVALONBAY | UDR | SBAコミュニケーションズ | AVALONBAY |
7 | VICIプロパティーズ | AVALONBAY | リアルティ・インカム | INVITATION HOMES |
8 | デジタル・リアルティ | サン・コミュニティー | インビテーション・ホームズ | SIMON Property |
9 | サン・コミュニティー | ヘルスピーク・コミュニティ | サン・コミュニティー | EQUINIX INC |
10 | レックスフォード | REXFORD INDUSTRIAL REALTY | ヘルスピーク・コミュニティ | EXTRA SPACE |
2023年7月時点での構成上位銘柄は以下となります。
ゼウス投信の購入手数料と信託手数料
ゼウス投信はアクティブ型投資信託ですので手数料はバカになりません。
まず購入する時に発生する手数料は税込みで3.24%になります。
また年間発生する信託手数料は年率1.6524%となります。
ファンド・オブ・ファンズ形式のアクティブ型の信託報酬の平均というレベルですが高く設定されていますね。
手数料で儲けようとする日本の投資信託の特徴を顕著に引き継いでいうことが出来ます。
決して安い手数料ではないでしょう。
新光US-REITオープン(愛称:ゼウス投信)の運用成績
それでは肝心のゼウス投信の成績について見ていきましょう。
ゼウス投信単体の運用成績
ゼウス投信の成績は最新の2022年12月の月報によると、以下のようになります。
赤:基準価格は最初の10,000円から現在は2000円と5分の1以上に下落していますが、青:分配金再投資基準価格は18年をかけて2倍になっています。
基準価額の騰落率 | |
過去1ヶ月 | 5.6% |
過去3ヶ月 | 11.4% |
過去6ヶ月 | 9.6% |
過去1年 | -2.5% |
過去3年 | 46.3% |
過去5年 | 46.9% |
設定来(2004年9月29日〜) | 211.0% |
年平均利回りは5.8%程度です。米国の株式指数であるS&P500指数の20年間の平均年率が7.5%程度であることを考えると正直物足りない成績ですね。
さらに上記の成績はあくまで「税引前」配当金再投資後の成績であり実現不可能なリターンです。
分配金再投資をした場合の運用成績の罠
先程の設定来の運用利回りは税引前分配再投資をした場合の成績です。通常投資信託から分配金を拠出された場合、20.315%の税金が自動的に徴収されます。
例えば10万円ゼウス投信から配当されたとしても手元には7万9,685円しか入金されません。
先程の運用成績は10万円をそのまま再投資した場合、つまり配当をせずにそのまま運用した場合の運用成績となります。
しかし。実際は7万9,685円しか再投資することが出来ないので実際の運用成績は先ほどのリターンを大きく下回る結果となります。
特に実際投資している米国リートの分配金が4%程度であるにも関わらず、年率15%程度の配当金を元本から払い出していることから、高配当利回りを出す代償として真に投資家の為になる運用を行っていないことは明白なのです。
高配当利回りで投資家を募り手数料を出来うる限り徴収しようという目論見が透けて見えます。
→ 投資信託は儲からないのはなぜ?本当におすすめの運用先とは。公募ファンドの仕組み/日米の公募投信のコスト比較 / 信託報酬(手数料)とリターンの関係
参考指数:FTSE NAREIT ALL Equity REIT (配当込み)との比較
米国株指数に対して低いリターンなのは、そもそも米国リート指数が米国株指数に対して以下のように2004年からの期間でアンダーパフォームしているので致し方ありません。
特に2020年のコロナショック後の株価指標のV字回復は目を見張るものがありました。
青:S&P500指数
赤:米国REIT
では参考指数となっているFTSE NAREIT ALL Equity REIT (配当込み)とゼウス投信の比較を見てみましょう。
ゼウス投信は税引前配当金再投資した場合の成績ですので、実際投資した場合よりも高いリターンとなっています。
しかし、上記のようにどの期間においてもゼウス投信が低い成績となっております。
結局のところゼウス投信は株式インデックスに劣後している、不動産指数に劣後したリターンしか出していないことになります。
せっかく、アクティブなリターンを狙うのであれば株価指数よりも高いリターンを出す選択肢に投資をしたいですよね。
筆者はヘッジファンドという選択肢をみつけて投資をして着実に資産を増やしていっています。
以下では筆者が投資しているファンドを含めて魅力的なファンドをランキング形式でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。
【2023年・国内和製優良ヘッジファンド】おすすめ投資先ランキング〜リスクを抑え安全・着実に資産を増やせる運用先(投資信託などアクティブファンド含む)を紹介。
高すぎる分配利回りは投資家にとって大きな不利益!特別分配金に気をつけよう!
ゼウス投信で最も気をつけなれければいけないのは過剰な分配金です。
3%-4%のリターンしか得ていないのに、15%の分配金利回りを支払っていることに様々なデメリットを被っています。
→ 危ない?悪くない?不労所得生活を実現できると噂の「毎月分配型」投資信託は最強なのだろうか。メリット・デメリットを列挙しわかりやすく解説
デメリット①:複利効果の毀損
複利効果の毀損については先述した通りです。分配金を支払った瞬間に20.315%の税金が発生するので全額を再投資することができません。
つまり複利効果が税金分だけ毀損することになるのです。
では具体的な例を以下2つの投信を用いて比較していきましょう。
A:基準価格が10,000円でリターンが5%で分配金を出さない
B:基準価格が10,000円でリターンが5%で全額分配金として分配する
A | B | ||
基準価格 | 税後分配金 | ||
現在 | 10,000 | 10000 | 398.425 |
1年後 | 10,500 | 10000 | 398.425 |
2年後 | 11,025 | 10000 | 398.425 |
3年後 | 11,576 | 10000 | 398.425 |
4年後 | 12,155 | 10000 | 398.425 |
5年後 | 12,763 | 10000 | 398.425 |
6年後 | 13,401 | 10000 | 398.425 |
7年後 | 14,071 | 10000 | 398.425 |
8年後 | 14,775 | 10000 | 398.425 |
9年後 | 15,513 | 10000 | 398.425 |
10年後 | 16,289 | 10000 | 398.425 |
利益合計 | 6,289 | 4,383 |
毎年のリターンは一緒であるにも関わらず、最終的なリターンはAの方が圧倒的に大きくなっています。
目先の分配利回りにとらわれず、価格の値上がり益まで加味して投資判断を下しましょう。
デメリット②:特別分配金で無駄な手数料を支払っている
また、更に注意しなければいけないのが特別分配金です。
3%-4%のリターンなのに15%の分配金を支払っているということは元本から分配金を支払っていることを意味しています。
実際、基準価格が右肩下がりに減少していることからも元本を取り崩していることがわかります。
このように元本から取る崩される分配金を特別分配金といいます。
特別分配金は元本からの払い出しなので非課税ではありますが、冷静に考えて欲しいことがあります。
購入手数料と毎年の信託手数料を支払っている元本から、分配金が拠出しているわけです。それなら預金から引き出していた方がましですよね。
投資信託の運用会社や販売会社に手数料を支払いながら預金を取り崩していることになっているのです。
表面上の高い分配利回りに騙されてはいけません。その分配金の原資がどこかという点についてもしっかりと確認しましょう。
デメリット③:配当金自体が下がり続けている
現在のゼウス投信の分配金は毎月25円となっています。年間ベースでいうと300円となっています。
現在の基準価額が2200円であることを考えると分配利回りは13%となっています。
しかし、ゼウス投信を長年経過観察している筆者からすると毎月25円の水準というのは当初の100円から大きく下がった水準となります。
つまり、最初に基準価額10,000円の時に投資した方からすると投資元本ベースでいうと3% の分配利回りとなります。
長期投資をすればするほど、投資元本ベースの分配利回りが低下していくことになっているのです。
ゼウス投信の今後の見通し
重要なのは今後の見通しです。住宅市場において最も影響を与えるのは住宅ローン金利の動向です。
皆さんもイメージしていただければ分かると思いますが、住宅ローン金利が高ければ物件価格が高い物件を購入することはできませんよね。
そして、現在米国の住宅ローン金利は以下の通り直近急騰しています。
これは米国で非常に強いインフレが発生しているためです。パンデミック後に金融緩和を行いお金をばらまいたことでお金がじゃぶじゃぶになりインフレが発生しました。
1970年以来の40年ぶりの水準です。インフレは庶民の生活を圧迫するので中央銀行は金利を引き上げて景気を冷ますことに躍起になっています。
結果として現在の住宅ローン金利は7%に近い水準となっています。
そして、まだまだインフレが収束する兆しはありません。ここからまだまだ利上げは進展していきます。
利上げが進展するに従ってゼウス投信の基準価額は下落していくことが見込まれています。
新光US-REITオープン(愛称:ゼウス投信)のまとめ
ゼウス投信は米国のリートに投資を行っているが、投資している米国リートから得られる配当金の3倍の分配金を拠出しています。
そのため、元本が大幅に取り崩されていっております。
本当に投資家の為になる運用を行うのであれば分配金を出すべきではありません。
高い分配金で顧客を引き付けてできうる限り投資信託を販売して、手数料を徴収して儲けていこうという意図が透けて見えます。
ただ配当利回りが高いというだけで投資商品を判断せずに投資対象を判断していきましょう。あえてゼウスに投資する理由はあまり見受けられません。
有望ファンドはいくらでもありますので、色々検討してから投資は判断した方が良いでしょう。
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