近年AIの成長は著しく今後の世界で重要性が増していくことは誰の目にも疑いのないこととなっているかと思います。
一言にAIといっても例えば以下の分野で主に活躍が期待されています。
AIの活躍領域
- IoT
- モバイル・インターネット
- 知識労働の自動化
- クラウド技術
- 先端ロボット
今後2025年時点で低く見積もっても16.2兆ドル、高めの試算では39.3兆ドルという市場規模になることが見込まれています。
まだ現在は本格的なAI社会の初期段階に立っているに過ぎないということです。
AI関連企業の売上は年々上昇の一途をたどっています。間違いなく成長産業ということになります。
このようなAI関連企業に投資している投資信託として「グローバルAIファンド」があります。
しかし、現在グローバルAIファンドは下落基調となっています。
本日はグローバルAIファンドについて特徴をお伝えした上で、なぜ下落基調となっているのか、今後の見通しはどうなのかという点についてお伝えしていきたいと思います。
グローバルAIファンドの特徴
まずはグローバルAIファンドの特徴をみていきましょう。
投資対象は世界のAI関連銘柄
グローバルAIファンドは世界の上場株式の中から以下のAI関連銘柄に投資をすることを投資対象としています。
投資対象
- AIテクノロジー開発
- AI開発に必要なコンピューティング技術
- AIを活用したサービス、ソフトエラの提供を行う企業
- AIを活用して自社ビジネスを成長させる企業
最後のAIを活用した自社ビジネスをせいちょうさせる企業は解釈が広く、ダイレクトにAI関連企業だけに投資しているというわけではなさそうです。
では実際にどのような銘柄に投資をしているのか次の項目でみていきましょう。
米国のハイテク銘柄中心の構成上位銘柄
構成上位10銘柄は全て米国企業です。10銘柄の合計構成比率は38.6%となります。
銘柄 | 国 | セクター | 構成比率 |
テスラ | 米国 | 電気自動車 | 6.3% |
ブロードコム | 米国 | 半導体 | 4.5% |
オン・セミコンダクター | 米国 | 半導体 | 4.4% |
ズームインフォ | 米国 | ソフトウェア | 4.1% |
マーベル | 米国 | 半導体 | 4.0% |
メタプラットフォーム(元FB) | 米国 | SNS | 3.8% |
エンフォーズエナジー | 米国 | クリーンエネルギー | 3.2% |
ディア | 米国 | 農業機械メーカー | 2.9% |
プラグパワー | 米国 | 燃料電池 | 2.8% |
トレードデスク | 米国 | ソフトウェア | 2.6% |
テスラは電気自動車ですが自動運転にはAIが必要なので納得ですね。
その他、半導体企業が多く組み入れられています。これは当然、AIを作動させるには半導体を組み入れるのはマストなので当然のことといえるでしょう。
テスラは2020年からのハイテクグロース相場を牽引する企業として誰もが注目した企業です。
一時は時価総額が100兆円を超えてGAFAM-Tとも言われるレベルに成長しています。
しかし、あまりにも株価が先行して高くなっていたということもあり株価は2021年末から軟調に推移しています。この理由は後で説明します。
そして、その他のハイテク企業も同様の値動きとなっています。
「為替ヘッジなし」と「為替ヘッジあり」のどちらを選択すべき?
グローバルAIファンドは「為替ヘッジなし」と「為替へっじあり」の二種類が存在します。
為替ヘッジなしだと円安になると基準価額は上昇して得をしますし、反対に円高になると基準価額は下落します。
重要なのは今後、円安となるか円高となるかという点です。
為替の見通しは非常に難しいので立てるのは無駄足です。プロですら半分しか当てることはできません。
ただ、中長期的な潮流は予想することができます。
2022年6月末現在ドル円は135円になっていますが、これは日米の金利差に影響をうけて上昇してきています。
インフレが加速し金利引き上げによる引き締めを急ぐ米国では長期金利は急上昇し、日銀はゼロ金利政策を維持することを決定して金融政策の対照性から日米金利差に注目があつまっています。
ただ、どこまでの米国の金利が上昇するわけではありません。
金利が上昇すると住宅金利が上昇したり、企業の借り入れコストが増加して経済が失速します。
すると、将来的に利下げになるのではないかという想起が働き長期金利は下落に転じていきます。
筆者の想定では長期金利が大きく下落し始めるのは今年の後半からだと考えています。
すると、今まで上昇してきたドル円は巻き戻しにあい急激に円高が進行すると考えています。
つまり現段階からは為替ヘッジありを購入した方が1年後のリターンは高いと考えています。ただ、これはあくまで事業会社で為替トレーダーを行なっていた筆者の想定です。
ドルはある程度は保有しておきたいと考えるならば為替ヘッジなしで保有するのも十分ありな選択肢といえます。
手数料はアクティブ投信の中では高めに設定
グローバルaiファンドの手数料は以下となります。
購入手数料:3.3%(税込)
信託手数料:年率1.925%(税込)
海外の株に投資をしているので手数料が高くなるのは致し方ない側面あります。
グローバルAIファンドの運用実績
では肝心な運用実績についてみていきましょう。
2021年後半から右肩下がり
2020年のパンデミック後に世界各国が金融緩和を行ったことで長期金利が低下してハイテクグロース企業に強烈な追い風が吹きました。
しかし、2021年後半から完全にバブルの崩壊の様相を呈してきています。(なぜ、下落しているかの理由は追ってお伝えします)
以下は為替ヘッジありですが、最高値から40%ほど下落していますね。
為替ヘッジなしは円安のクッションのおかげで下落幅は25%とマイルドになっています。
ナスダック総合指数も他のハイテク投信も同様の動き
では、グローバルaiファンドの値動きが、特有のものなのかという点について指数や他の投信と比較してみていきたいと思います。
今回比較するのは米国のハイテク株が多く組み入れられているナスダック総合指数と、他のハイテク投信を比較していきます。
黄色:グローバルaiファンド
青色:サイバーセキュリティ株式オープン
赤色:ナスダック総合指数
緑色:ゼロコンタクト
紫色:クリーンテック株式ファンド
サイバーセキュリティ株式 | グローバルAIファンド | クリーンテック株式ファンド | デジタル・トランスフォーメーション株式 | ナスダック総合指数 | |
リターン1年 | -3.05% | -16.94% | 0.23% | -57.87% | 3.07% |
リターン3年(年率) | 18.79% | 26.03% | -- | -- | 23.41% |
シャープレシオ1年 | -0.10 | -0.56 | 0.01 | -1.39 | -- |
シャープレシオ3年 | 0.75 | 0.93 | -- | -- | -- |
標準偏差1年 | 31.18 | 30.01 | 25.50 | 41.74 | -- |
標準偏差3年 | 24.95 | 27.86 | -- | -- | -- |
ゼロコンタクトだけは著しく悪い成績となっていますが、グローバルaiファンドは他の3つとナスダック総合指数と殆ど同じ動きをしていますね。
どうやらグローバルaiファンド特有の理由により下落しているというよりは、ハイテク株全体に下落ち圧力がかかっていることがわかります。
関連
グローバルAIファンドが下落している理由とは?今後の見通しは暗い?
グローバルAIファンドが下落している理由はナスダックが下落している理由を考えることと同じこととなります。
そもそも2020年にハイテク企業が大きく株価を引き上げた理由を考える必要があります。
理由は2点あります。
1点目はパンデミックによって社会変革が進むデジタル企業のサービスが脚光を集め利用促進が進んだこと
2点目は金融緩和によって金利が大幅に下落したこと
この2点によってグロース株は大きく株価を上昇させていきました。
しかし、2021年後半から上記2点の流れが逆流を開始しています。
1点目は2020年から2021年にデジタル化が急激に進行したことで2022年以降の成長率は鈍化しています。
つまり成長の先食いをしてしまったということですね。株価は近い将来を見て動きますので今後の成長率が鈍化するのであれば株価は織り込みすぎた期待を調整する方向つまり下落していきます。
2点目は金融緩和によって流動性を提供し続けた結果、逆に過度なインフレが発生しています。
米国では1970年代のオイルショックと同等のインフレ率は年率8%を超える水準になってきています。
米国の中央銀行FRBが目指すインフレ率は2%です。つまりFRBは金利を引き上げて需要を抑制してインフレを押し下げることに躍起になっているのです。
すると米国の金利は上昇し、今まで許容されていたグロース株の高いPERが許容されなくなります。
企業価値は将来の利益を現在の価値に割り引いて算出します。グロース株は将来の利益に期待がなされているので、金利が上昇すると割引率が上昇し現在時点での価値が小さくなります。
例えば10年後の100億円の利益を割引率5%で現在価値に割り引いた場合は61億円となりますが、割引率10%で割り引いた場合は38億円となるのです。
そのため、金融緩和局面ではグロース株は強く、金融引き締め局面ではグロース株は弱くなるのです。
米国のインフレはとどまるところをしらず、中央銀行が引き締めに転じるには時間が必要です。
しばらくはグローバルaiファンドなどのハイテク銘柄に投資をしている投信の見通しは厳しいといえるでしょう。
このように特定のセクターに投資するファンドは、時期を見極めることで大きな利益を出すこともできますが、反対に大きな損失をだすこともあります。
ただ、相場の将来を見通すことは非常に難しいので、このようなファンドに投資するのは運否天賦的な側面も強いです。
筆者としては、いかなる環境でも一定の割合で資産を増やしてくれるレイダリオが運用する世界最大のヘッジファンド「ブリッジウォーターアソシエイツ」のようなファンドへの投資が魅力的と考えています。
ブリッジウォーターは1000億円からしか投資できませんが、同様の成績を挙げている日本のヘッジファンドには投資することができます。
以下で筆者が投資しているものも含めてお伝えしていますので参考にしていただければと思います。
【2022年・国内和製優良ヘッジファンド】おすすめ投資先ランキング〜リスクを抑え安全・着実に資産を増やせる運用先(投資信託などアクティブファンド含む)を紹介。
以前はよかったが最近は痛烈な批判が相次ぐ口コミや評判
調子のよかった2021年後半まではポジティブなコメントが相次いていました。流行にのったという感じですね。
https://twitter.com/sekihara_d/status/1433388095710187524?s=20&t=Z_ply2Z5e2XuG0huW0rtWg
全力でグローバルAIファンドに投入しようかな!分配金ほしい。
— 祥容子 (@oonoarasi) November 16, 2021
しかし、現在2022年になってからは殆ど話題にのぼりません。
話題にでたとしても以下の通り不満を述べているアカウントがあるだけとなっています。
グローバルAIファンド保有しているのだが、1年でアホみたいに下がったな。クソ赤字。国内は小学生のお小遣い程度しか毎月積み立ててなかったけど、お年玉くらいは損失してる。
これでなーにが貯蓄から投資というどの口が
(全世界は一応プラスで、トータルプラマイ相殺)— 塩杏仁 (@sioahn) June 18, 2022
ただ、グローバルaiファンドが悪いよいうより世界的な潮流の中で致し方ない側面が大きいので、グローバルaiファンドを責めるのはお門違いですね。
まとめ
今回のポイントは以下となります。
ポイント
- AI開発だけでなくAIを活用している企業も投資対象としている
- 殆どが米国のハイテク銘柄で占められている
- ナスダックと殆ど同じ動きとなっており2021年後半から不調
- 織り込みすぎた期待の剥落と金融引き締めが理由で下落している
- ブームの崩壊で下落の流れは暫く継続しそうである
[/st-mybox
特定のセクターへの集中投資は博打的な側面が強いです。いかなる環境でも安定した利益をあげてくれるファンドを選択肢として考えましょう。