不動産は「不労所得」の代名詞とも言えるくらい、人気の資産運用法です。
しかし、実際に取り組んでみるとその大変さに驚きすぐに撤退してしまう人が少なくありません。
筆者も不動産は2件ほど真剣に投資をしていますが、あれは事業です。筆者は本業が忙しいので、それ以上の拡大は断念しました。
同じような経験をした人も多いかと思います。
しかし、不動産の実物に投資をする時間がなくても不動産に投資をする方法がありました。それがREITですね。
REITに関して詳しくは以下の記事で解説していますので参考にしてみてください。
→ おすすめしない?高配当利回りで評判のJ-REIT(リート)とは?2023年からの見通しを含めてわかりやすく解説する!
今回はそんなREIT商品の中でも人気の「フィデリティ・USリート・ファンド」について分析していきます。
フィデリティ・USリート・ファンドはどんなファンド?
投資対象
目論見書によると、投資対象は不動産に投資しているREITではなく、米国のREITに投資をすることになっています。
主として米国の取引所に上場(これに準じるものを含みます。)されている不動産投 資信託(リート)に投資を行ないます。
つまりは米国の不動産に投資していると同じ効果が得られるということです。
米国といえば不動産価格の上下動が日本に比べて高く、また一般消費者も活発に不動産(持ち家)を購入する文化です。
つまり、ボラティリティが景気変動によって日本より大きく、やりようによっては大きく利益を上げられる可能性があります。
リーマンショックなどを経ながらも、最終的には上昇に向かっており、流石は資本主義国家ですよね。
(資本主義に特化しすぎたために国内格差は酷いことになっていますが)
上位の組み入れ銘柄
フィデリティUSリートファンドの組み入れ銘柄は以下となっています。
銘柄 | 形態 | 比率 | |
1 | PROLOGIS INC | 産業施設 | 9.40% |
2 | AMERICAN TOWER CORP | インフラ | 8.30% |
3 | CROWN CASTLE | インフラ | 6.60% |
4 | DIGITAL REALITY TRUST INC | データセンター | 5.40% |
5 | REALTY INCOME CORP | 商業・小売 | 5.30% |
6 | VICI PROPERTIES | 特殊施設 | 4.80% |
7 | HEAL THPEAK PROPERTIES INC | 医療施設 | 4.50% |
8 | SUN COMMUNITIES INC | 医療施設 | 4.40% |
9 | REXFORD INDUSTRIAL REALTY INC | 産業施設 | 3.80% |
10 | INVITATION HOMES INC | 住居 | 3.50% |
2022年10月からの構成上位の推移は以下となります。
2023年4月 | 2022年10月 | |
1 | PROLOGIS INC | PROLOGIS INC |
2 | エクイニクス | AMERICAN TOWER CORP |
3 | ウェルタワー | CROWN CASTLE |
4 | CROWN CASTLE | DIGITAL REALITY TRUST INC |
5 | DIGITAL REALITY TRUST INC | REALTY INCOME CORP |
6 | エクストラ・スペース | VICI PROPERTIES |
7 | ベンタス | HEAL THPEAK PROPERTIES INC |
8 | UDR | SUN COMMUNITIES INC |
9 | ミッドアメリカアパートメント | REXFORD INDUSTRIAL REALTY INC |
10 | INVITATION HOMES INC | INVITATION HOMES INC |
ポートフォリオ1位のプロロジスはサンフランシスコの物流施設への投資にノウハウを持った会社です。
プロロジスは、世界的な物流不動産企業であり、物流施設の所有・運営に特化しています。同社は、倉庫、配送センター、物流パークなど、多様なタイプの物流施設を提供し、グローバルな物流ネットワークを展開しています。
プロロジスは、顧客のニーズに合わせたカスタマイズされた物流ソリューションを提供し、最先端のテクノロジーを活用して効率的な物流プロセスを支援します。
株価は直近1年は-13.44%となっています。
エクイニクスは、グローバルなデータセンターおよびインターコネクションソリューションを提供するリーディングカンパニーです。同社は世界中に広がるデータセンターを運営し、企業や組織に高速かつセキュアなデータの収容、共有、接続環境を提供しています。
エクイニクスのネットワークエコシステムは、クラウドプロバイダー、ネットワークサービスプロバイダー、エンタープライズ企業など、さまざまな関係者を一つのプラットフォームで結びつけ、デジタルビジネスの成長とイノベーションを促進しています。
同じく株価は厳しいですね。
米国の不動産を扱った企業の株価が下落しているのは明確な理由があります。
米国は止まらないインフレを退治するために、歴史上類をみないレベルの金融引き締めを行なっています。
金利が上昇すると当然ローンを借りる需要が低くなるので不動産投資熱が冷えて不動産価格は低下していきます。
この金融引き締めの影響をダイレクトにうけているのです。
分配金は引き下げ?
REITといえば分配金ですが、推移は以下の通りとなっています。
米国リート配当利回りは4.2%となっていますが、リーマンショック以前の水準には戻っていません。
当時は10%を超えていたのですね。徐々に下降線を辿っています。資本主義の限界も感じさせるところがあります。
2020年は超低金利バブルでしたが、やはり4-5%程度の配当利回りが限界であることがわかります。あとは基準価額との相談になります。(後続で解説)
手数料
手数料体系は以下となっています。
- 購入手数料:3.85%(税抜3.50%)
- 信託報酬:1.54%(税抜1.40%)
初年度は5%以上の手数料がかかりますので、配当利回り4.2%はここで消えてしまうことになります。
フィデリティ・USリート・ファンドの運用実績は?
それでは運用実績を見ていきましょう。配当利回りが高くても、運用実績が低くては元本割れでトータルはマイナスになってしまいます。
配当株、配当投信の罠ともいえます。
以下が運用実績です。ベンチマーク(FTSE NAREIT Equity REITs)を下回っています。
設定来は分配金再投資だとしても347%となっており、年率で直すと7.7%程度です。インデックスと同等の成績に見えますが、低金利時代と円安の2020-2022年を含めてもこの成績なので、かなり厳しいです。
掲示板の口コミと評判
それでは掲示板での口コミや評判をお伝えしていきます。
娘ちゃん(2歳)のジュニアNISA投資信託を選定中。
🌟新生 UTIインドファンド
🌟フィデリティ・USリート・ファンドD
🌟アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信D➡手数料割高でつみたて停止
🌟eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)
🌟iFreeNEXT FANG+インデックス➡つみたて継続
— 楽天NISAマン🦜FIREを目指して頑張る人 (@rakutenNISA) December 27, 2020
🌟五位 フィデリティ・USリート・ファンド(資産成長型)D(為替ヘッジなし)
あの波乱の3か月で2%……まあ、REITだしね。これ以上下がらなければなんでもいい。(来年から積立停止)
— 楽天NISAマン🦜FIREを目指して頑張る人 (@rakutenNISA) December 30, 2020
運用会社別の流出入
一方、投信市場でこの10年ほど主役だった「毎月分配型」は苦境が著しい。
投信の残高首位だった毎月分配型の「フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)」の解約売りが相次ぎ、運用残高は1兆円を割り込んだ。 pic.twitter.com/uUnq3Z2ldK— Izumo_maru (@Izumo_maru) January 10, 2018
フィデリティ・USリート・ファンドB(為替ヘッジなし)、2ヶ月で1900億円超の資金流出 https://t.co/0FgUkiYOHe
— エル 【L】米国株投資実践日記🇺🇸🇯🇵📚 (@leveraged1) January 28, 2018
コロナ禍はオフィス需要がなくなる、人類は一生外出できないといった恐怖もあったことから、資金流出なども・・・?と思いましたが2018年の時点で解約相次いでいたみたいですね。
今後の見通しは?
不動産は金利が全てと言っても過言では有りません。現在は米国のインフレが落ち着きつつあるとはいえ、未だにFRBの目標のはるか上を推移しています。
FRBの目標としているインフレ率は2%ですが、現在2023年5月時点のインフレ率は5%となっています。
インフレが落ち着き、利上げから利下げに転じることがない限り、フィデリティ・USリートを購入するのは非常に危険ということです。
そして不動産市場は次の金融危機の震源地とも目されています。
金利が上昇したことに加え、働き方改革でリモートワークへと移行がすすみ商業用不動産の需要が低下して価格が急落しました。
結果として、商業用不動産に投資しているファンドが顧客からの解約対応ができなくなり解約制限を課しています。
最近、資金運用に行き詰まる投資ファンドが増えている。コロナ禍を経た「働き方の変化」で、オフィスビルの空室率が上昇していることが関係している。加えて金利が一時上昇したこともあり、商業用不動産の価値下落によって顧客への資金返還が難しくなるファンドが出ているのだ。金融専門家の中には、次の危機の震源地として「商業用不動産などに投資するファンド」への警戒を強めている向きがある。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)
参照:ダイアモンド
解約以来がとまらず解約対応のために不動産を売却し、株を売却し現金を捻出するという事象が雪崩をうって発生すると金融危機が発生します。
その確率が今、一番高いと見込まれているのが米国の不動産市場なのです。
そのような震源地となりうる資産に集中投資するのは合理的な選択肢とはいえなしでしょう。
いかなる環境でも安定したリターンをだせる資産に投資をするべきです。