資産運用を本格的に考えた時に、まずは投資先として考えるのは株式だと思います。
筆者も同様に、株式に興味を持ちましたが、あまりにも難易度が高いですよね。
そこで次に考えつくのが投資信託だと思います。
投資信託であれば、大手の金融機関が販売しているし、信託の営業マンもおすすめしてくれるし間違いないはずだと思ってしまいます。
しかし、投資信託は個別株に投資するのと同様に自分でどんなテーマ、領域に投資をするのかを決める必要があります。
つまり、十分な分析が必要なのです。
しかし、世の中の多くの個人投資家は投資信託の目論見書(説明書のようなもの)もろくに読まずに、ファンド選びをして、当然の如く損失を出してしまいます。
今回はきっと目論見書をろくに読まず、ファンドの名前に惹かれて投資してしまっている人も多いであろう、次世代通信関連世界株式戦略ファンド(THE 5G)について分析していきたいと思います。
次世代通信関連世界株式戦略ファンド(THE 5G)とは?
運用会社は三井住友トラスト・アセットマネジメント
運用は三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社が実施しています。
住信アセットマネジメント株式会社と中央三井アセットマネジメント株式会社が合併してできた運用会社ですね。その後、三井住友信託銀行の資産運用部門も統合しています。
J-REIT・リサーチ・オープン、NWQフレキシブル・インカムファンドなどの運用を行なっている会社ですが、次世代通信関連世界株式戦略ファンドが一番規模が大きくなっています。
インデックスファンドより大きな資産が次世代通信関連世界株式戦略ファンドなのは意外でした。
ファンズ・オブ・ファンズ形式の運用
ファンズ・オブ・ファンズで運用されています。
ファンズ・オブ・ファンズとはつまり、投資家から預かった資金を、直接株式や債券といった資産に投資するのではなく、株式や債券に投資して いる複数の投資信託に投資して運用を行う仕組みです。
つまりは、次世代通信関連世界株式戦略ファンドが「あなたの代わりに投資信託を選んで上げます」ということです。株ではないのか、と初めて聞いた時に筆者は思いました。つまり、2つのファンドに手数料が落ちていく仕組みになっているということです。
実際に運用しているのは「ニューバーガー・バーマン・グループ」の運用会社である「ニューバーガー・バーマン・イ ンベストメント・アドバイザーズ・エル・エル・シー」が行います。米国の独立系運用会社ですね。アメリカのひふみ投信といったイメージです(投資内容は全然違うとは思います)。
投資対象は世界の次世代通信関連企業
次世代通信関連企業は、このファンドにおいては「通信技術の発展によって業績面で恩恵を受けることが期待される企業」と定義されています。
半導体銘柄がなんとなく思い浮かびます。オランダのASMなどが投資先となりそうですね。
2022年6月現在は半導体セクターは地獄を見ており、これからさらにそれは加速するものと思いますのですでに嫌な予感しかしません。
以下は半導体ETFの推移ですが、年始から続落していますね。
次世代通信関連世界株式戦略ファンドの最新ポートフォリオ
2022年5月末時点の最新のポートフォリオを見ていきましょう。
銘柄 | 国・地域 | 業種 | 産業分野 | 比率 | 会社概要 | |
1 | アドバンスト・マイクロ・デバイセズ | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ 関連 | 4.22% | 米国の半導体メーカーで、CPU(演算処理半導体)や GPU(画像処理半導体)に強みを有する企業。 |
2 | ASMインターナショナル | オランダ | 情報技術 | 通信インフラ 関連 | 4.05% | オランダの半導体製造装置メーカー。半導体ウエハー 上に回路の素材となる膜を形成する成膜装置に強みを 有する。 |
3 | マーベル・テクノロジー | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ 関連 | 4.05% | 米国の半導体メーカー。通信基地局やデータセンター向 けの半導体に強みを有する。 |
4 | キーサイト・テクノロジーズ | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ 関連 | 3.88% | 世界中の通信関連企業を顧客に持つ電子計測機器 メーカー。ネットワークの通信状況を計測するテスト機器 に強み。 |
5 | アドバンテスト | 日本 | 情報技術 | 通信インフラ 関連 | 3.82% | 半導体テスタのメーカーで、同分野において高い市場 シェアを有しており、5Gの普及や社会のIoT化にとって次 世代の半導体は必要不可欠な存在。 |
6 | サービスナウ | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ 関連 | 3.65% | クラウドを通じて業務支援ソフトウェアを提供するプラット フォームに強みを有する。業務支援ソフトウェアの分野 におけるグローバルリーダー。 |
7 | ノキア | フィンランド | 情報技術 | 通信インフラ 関連 | 3.44% | 基地局などの通信インフラの敷設において中心的な役 割を担う世界的な通信機器メーカー。 |
8 | スターパワー・セミコンダクター | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ 関連 | 3.22% | 中国の半導体メーカー。IGBT(絶縁ゲート型バイポーラ・ トランジスタ)と呼ばれる、電力の制御、供給を担う半導 体に強みを有する。 |
9 | ハブスポット | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ 関連 | 3.17% | オンラインマーケティングに必要なソフトウェアを手掛け る。中小事業者向け製品に強みを有する。 |
10 | ツー・シックス | 米国 | 情報技術 | 通信インフラ 関連 | 3.02% | 光学部品や半導体の材料となるウエハーを提供する米 国の電子部品メーカー。 |
予想通りASMインターナショナルが入っていました。
1位のアドバンスト・マイクロ・デバイセズはバリバリの半導体銘柄ですね。
アドバンスド・マイクロ・デバイシズは米国の半導体メーカー。コンピュータ、グラフィックス、家電市場向けマイクロプロセッサの製造、販売に従事。コンピュータ搭載用のx86マイクロプロセッサ、ノート型パソコン、ワークステーション、サーバーに使用されるチップセットなどを提供。同社製品は「AMD」の商標名で展開。本社はカリフォルニア州サニーベル。
2021年は株価上昇していましたが、2022年はとんでもないことになっています。年初来は-45%と実に半値となっています。1000万円投資したら今500万円ですね。
それでは実際に直近のパフォーマンスを見ていきましょう。
基準価額と運用成績(パフォーマンス)
想像通り、2022年に入り大暴落を起こしています。そもそも2020年から半導体銘柄は株価上昇しすぎました。米国の歴史的に類を見ないレベルの金融緩和により大流行したセクターでしたが、そんなセクターほど今年は売られていますし、金融引き締めも続くので今後も売られます。
2017年の設定来+48.64%となっています。2020年の超追い風を考えると物足りない運用とも感じます。
テーマファンドなので、さらなるパフォーマンスが期待されます。そして今後はさらなる厳しい時代を迎えるので正念場ですね。これから投資を考える人は無理して手を出さなくて良いと思います。
1カ月 | 3カ月 | 6カ月 | 1年 | 3年(年率) | 5年(年率) | 10年(年率) | 設定来 | |
トータルリターン | -3.37% | -10.37% | -24.75% | -16.85% | 13.63% | -- | -- | 48.64% |
他ファンドとの比較(グローバルAIファンド 「ゼロコンタクト」/デジタルトランスフォーメーション株式ファンド/サイバー セキュリティ株式オープン/投資のソムリエ)
以下のファンドがなぜかよく比較対象になっている印象を受けます。全てテーマファンドですね。
テーマファンドは基本的に金融引き締め局面では全滅するのですが、一応並べてみたいと思います。
- グローバルAIファンド
- (ゼロコンタクト)デジタルトランスフォーメーション株式ファンド
- サイバー セキュリティ株式オープン
- 投資のソムリエ
ファンド名 | 次世代通信関連 世界株式戦略ファンド | 投資のソムリエ | グローバルAIファンド | サイバーセキュリティ株式(H無) | デジタル・トランスフォーメーション株式 |
運用会社名 | 三井住友TAM | アセマネOne | 三井住友DS | 三菱UFJ国際 | 日興 |
カテゴリー | 国際株式・グローバル・含む日本(F) | 安定成長 | 国際株式・北米(F) | 国際株式・北米(F) | 国際株式・グローバル・含む日本(F) |
基準価額 | 13,616円 | 10,868円 | 25,881円 | 21,947円 | 4,642円 |
純資産 | 393,040 百万円 | 576,786 百万円 | 291,345 百万円 | 290,844 百万円 | 180,952 百万円 |
ヘッジ | 無 | 無 | 無 | 無 | 無 |
最低申込金額 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 | 10,000円 |
販売手数料 | 3.30% | 3.30% | 3.30% | 3.30% | 3.30% |
信託報酬等(税込) | 1.85% | 1.54% | 1.93% | 1.87% | 1.80% |
運用年数 | 4年 | 9年 | 5年 | 4年 | 1年 |
トータルリターン1年 | -16.85% | -7.15% | -16.94% | -3.05% | -57.87% |
トータルリターン3年(年率) | 13.63% | 0.09% | 26.03% | 18.79% | -- |
トータルリターン5年(年率) | -- | 0.78% | 19.10% | -- | -- |
トータルリターン10年(年率) | -- | -- | -- | -- | -- |
シャープレシオ1年 | -0.61 | -1.88 | -0.56 | -0.1 | -1.39 |
シャープレシオ3年 | 0.63 | 0.03 | 0.93 | 0.75 | -- |
シャープレシオ5年 | -- | 0.25 | 0.75 | -- | -- |
シャープレシオ10年 | -- | -- | -- | -- | -- |
標準偏差1年 | 27.55 | 3.81 | 30.01 | 31.18 | 41.74 |
標準偏差3年 | 21.77 | 3.22 | 27.86 | 24.95 | -- |
標準偏差5年 | -- | 3.07 | 25.45 | -- | -- |
標準偏差10年 | -- | -- | -- | -- | -- |
どれも運用歴が短く比較が困難なのですが、グローバルAIファンドが一番ましであることは確実です。次世代通信関連 世界株式戦略ファンドは3年のリターンでも3位ですね。
グローバルAIファンド、サイバーセキュリティ株式ファンドの順でましです。しかし、2022年、2023年は確実に正念場です。
なぜそこまでネガティブなことを言うかというと、この種類のテーマ株を取り扱うファンドは、米国経済が不況に向かっている時は下落は免れることができないのです。
不況から好景気に向かう時は、テーマ株は大幅上昇します。そして、それがコロナショックからの金融相場が生まれた2020→2021年だったのです。
2022年になり、この大幅上昇が思い切り巻き戻されます。そして少なくとも2年ほどは継続するのがセオリーです。
テーマ株とは
テーマ株とは、話題の企業や業種、または業界の銘柄を一つのまとまりとして考える、株式の分類方法の一つです。例えば「将来性」はテーマ株としてよく用いられます。将来性がある企業の株には、さまざまな方面から資金が入ることが期待できるからです。
IG証券より引用
まとめ
今回は次世代通信関連 世界株式戦略ファンドについて取り上げてきました。
あまりにも話題にのぼるので調べてみましたが、やはり筆者はテーマファンドは苦手です。
自分でテーマを選ぶ必要がありますし、長期前提で投資するにもボラティリティが大きすぎます。
また、何よりもテーマ株の選定の難しさを理解しているので、10年経過した時に本当にテーマファンドはプラスのリターンをもたらしてくれるのかと不安になるからです。
筆者は堅実な投資でプラスリターンを毎年確実に積み上げていくことを好みます。それが最も資産形成では実は近道になるからです。
効果的、正しいものほど面白くない、というのは投資の世界だけではなく、どんな世界でも一緒です。しっかりと黙々と資産を積み上げていきましょう。