日本には3つのメガバンクが存在しています。
「三菱UFJフィナンシャルグループ」と「三井住友フィナンシャルグループ」と「みずほフィナンシャルグループ」です。
最初の2つは以前、当サイトでも分析しました。
本日、分析するのは最後の一角「みずほフィナンシャルグループ」です。
「みずほフィナンシャルグループ」は以下の通り他の2つに比べると株価が上がらず伸び悩んでいます。
みずほフィナンシャルグループ
三菱UFJフィナンシャルグループ
三井住友フィナンシャルグループ
本日は「みずほフィナンシャルグループ」の事業内容を見た上で、業績推移と今後の株価の予想をみていきたいと思います。
「みずほフィナンシャルグループ」の5つの事業分類
では、まず「みずほフィナンシャルグループ」の事業概要についてみていきたいと思います。
地銀などの中規模の銀行は伝統的な利鞘ビジネスを行なっていますが、みずほ銀行などのメガバンクは事業も多様化しています。
大きくわけて5つあるので、それぞれ見ていきたいと思います。
リテール事業法人カンパニー
このカンパニーは従来の銀行ビジネスです。個人や中小企業を対象にしています。主に貸付を行う部門ですね。
メガバンクならではの総合的なサービスを対面ビジネスを進化させて、DXも取り入れてサービスを提供するとしています。
DX分野におけるGoogleとの戦略的提携について
2022年3月、<みずほ>とグーグル・クラウド・ジャパンは、DX分野における戦略的提携に合意しました。本提携に基づき、お客さまお一人おひとりごとに最適化されたコミュニケーション、マーケティングの実現や、新たなプラットフォーム構築による先進的な金融サービスの実現、DXの加速等に向けて協働して取り組みます。
参照;MIZUHO
コーポレート&インベストメントバンキングカンパニー
この部門はメガバンクならではの部門ですね。サービス対象は大企業です。
大企業への様々なスキームでの貸付を実施して大企業の事業をサポートしています。
単純な貸付だけでなく、企業に対してではなくプロジェクトそのものに対して貸付を行うプロジェクトファイナンスなども取り扱っています。
プリジェクトファイナンスとは?
プロジェクトファイナンスは、特定のプロジェクトの実施や開発に必要な資金を調達するための財務手法です。通常、大規模なインフラストラクチャーやエネルギー関連プロジェクトなど、長期間にわたる高額な投資が必要なプロジェクトに使用されます。
プロジェクトファイナンスでは、プロジェクト自体が収益を生み出す能力を持つことが重要です。投資家や金融機関は、プロジェクトの将来の収益やキャッシュフローを評価し、その安定性と返済能力を考慮して資金提供を行います。
プロジェクトファイナンスの特徴的な要素は以下の通りです:
- プロジェクト自体が独立した法的・財務的実体となり、プロジェクトの収益を基に債務を返済する。
- プロジェクトのリスクとリターンは投資家や融資者とプロジェクト開発者との間で分散される。
- プロジェクトのキャッシュフローと資産が債務の担保となり、返済能力が確保される。
プロジェクトファイナンスは、リスクの分散や長期的な資金調達のニーズに対応するために広く活用されています。
さらにインベストバンキングという名前が入っていることからわかる通り、投資銀行サービスも提供しています。
つまり、合併や会社や事業の売却を通じてフィーも獲得しているということです。
グローバルコーポレート&インベストメントバンキングカンパニー
これは名前からもわかる通り、コーポレート&インベストバンキングカンパニーのグローバルバージョンですね。
アジアを中心に約40カ国、120拠点でサービスを提供しています。
特に米国では日系トップの高いプレゼンスを発揮しています。
世界最大の金融マーケットである北米資本市場ビジネスにおいて、業種知見や社債ビジネス等の強みを活かしています。投資適格級を中心とした企業とのビジネス領域から、非投資適格級の企業やスポンサーとのビジネスへ領域を拡大するため、2022年1月にCapstone Partners(CSP)の買収を発表しました。CSPが持つ投資家基盤とプレイスメントエージェントの知見を活かし、付加価値の高い戦略的ソリューションの提案を通じて、米国資本市場ビジネスをさらに高いステージに成長させていきます。
グローバルマーケッツカンパニー
グローバルマーケッツカンパニーというのは株式市場、債券市場などの金融市場を通じて利益を獲得するビジネスです。
オプションや先物などの金融商品を大企業等に販売したり、自己勘定で運用することでリターンを狙う部門です。
米国のメガバンクなどでは大きく台頭している部門でもあります。
アセットマネジメントカンパニー
主に投資信託の組成と運用を行い信託報酬で利益を獲得する部門です。
運用はアセットマネジメントOneが担っています。数多くの投資信託を組成しています。
以前、当サイトでも分析した「企業価値成長小型株ファンド」(=眼力)もアセットマネジメントOneが運用を行なっています。
→ 【眼力(ガンリキ)】暴落の理由とは? 昨年リターンが高いと評判の小型株投資信託「企業価値成長小型株ファンド」を徹底評価!
「みずほフィナンシャルグループ」の事業毎の利益の内訳
みずほFGの事業毎の利益の内訳は以下となります。
国内、国外の大企業向けの高度で複雑化した銀行サービスの利益が屋台骨を支えいるのがよくわかります。
利益の9割以上を国内外のコーポレート&インベストメントバンキングカンパニー部門が稼ぎ出しています。
メガバンクならではの収益構造であるといえるでしょう。
「みずほフィナンシャルグループ」の純利益の推移
みずほフィナンシャルグループの純利益の推移です。あまり10年間、利益が拡張しておらず停滞していますね。
当期利益 | EPS | |
2007/03 | 620,965 | 245.0円 |
2008/03 | 311,224 | 122.8円 |
2009/03 | -588,814 | -円 |
2010/03 | 239,404 | 94.5円 |
2011/03 | 413,228 | 163.1円 |
2012/03 | 484,519 | 191.2円 |
2013/03 | 560,516 | 221.2円 |
2014/03 | 688,415 | 271.7円 |
2015/03 | 611,935 | 241.5円 |
2016/03 | 670,943 | 264.8円 |
2017/03 | 603,544 | 238.2円 |
2018/03 | 576,547 | 227.5円 |
2019/03 | 96,566 | 38.1円 |
2020/03 | 448,568 | 177.0円 |
2021/03 | 471,020 | 185.9円 |
2022/03 | 530,479 | 209.3円 |
2023/03 | 555,527 | 219.2円 |
2024/03予 | 610,000 | 240.7円 |
みずほFGの業績を三菱UFJFGと三井住友FGの業績と比較!
では業績推移を他のメガバンクと比較してみましょう。
みずほFG | 三菱UFJFG | 三井住友FG | |
Mar-07 | 620,965 | 880,997 | 441,351 |
Mar-08 | 311,224 | 636,624 | 461,536 |
Mar-09 | -588,814 | -256,952 | -373,456 |
Mar-10 | 239,404 | 388,734 | 271,559 |
Mar-11 | 413,228 | 583,079 | 475,895 |
Mar-12 | 484,519 | 981,331 | 518,536 |
Mar-13 | 560,516 | 852,623 | 794,059 |
Mar-14 | 688,415 | 984,845 | 835,357 |
Mar-15 | 611,935 | 1,033,759 | 753,610 |
Mar-16 | 670,943 | 951,402 | 646,687 |
Mar-17 | 603,544 | 926,440 | 706,519 |
Mar-18 | 576,547 | 989,664 | 734,368 |
Mar-19 | 96,566 | 872,689 | 726,681 |
Mar-20 | 448,568 | 528,151 | 703,883 |
Mar-21 | 471,020 | 777,018 | 512,812 |
Mar-22 | 530,479 | 1,130,840 | 706,631 |
Mar-23 | 555,527 | 1,116,496 | 805,842 |
わかりやすく2007年の純利益を100に統一して比較したものが以下となります。
やはり業績が一番芳しくないのが「みずほFG」ですね。株価の伸びが悪いのも納得できます。
みずほFG | 三菱UFJFG | 三井住友FG | |
Mar-07 | 100.0 | 100.0 | 100.0 |
Mar-08 | 50.1 | 72.3 | 104.6 |
Mar-09 | -94.8 | -29.2 | -84.6 |
Mar-10 | 38.6 | 44.1 | 61.5 |
Mar-11 | 66.5 | 66.2 | 107.8 |
Mar-12 | 78.0 | 111.4 | 117.5 |
Mar-13 | 90.3 | 96.8 | 179.9 |
Mar-14 | 110.9 | 111.8 | 189.3 |
Mar-15 | 98.5 | 117.3 | 170.8 |
Mar-16 | 108.0 | 108.0 | 146.5 |
Mar-17 | 97.2 | 105.2 | 160.1 |
Mar-18 | 92.8 | 112.3 | 166.4 |
Mar-19 | 15.6 | 99.1 | 164.6 |
Mar-20 | 72.2 | 59.9 | 159.5 |
Mar-21 | 75.9 | 88.2 | 116.2 |
Mar-22 | 85.4 | 128.4 | 160.1 |
Mar-23 | 89.5 | 126.7 | 182.6 |
みずほ銀行の株価はなぜ安い?なぜ上がらない?業界要因と個別要因を解説
では本題に入っていきたいと思います。なぜ「みずほFG」の株価が上昇せず安いのかという点を紐解いていきたと思います。
業界要因:長期化する日本銀行の金融緩和
まず、銀行全体にいえることですが基本的な利鞘ビジネスというのは預金者から低い金利で預かった資金を高い金利で貸付を行うことで利益を積み上げていきます。
ながらく預金者に対しては、ほぼゼロ金利で資金を預かっていますが、2010年代の日銀の金融緩和で貸し出し金利が大幅に低下して預貸金利差が大きく縮小しました。
金利差は銀行収益の根幹をなすものです。銀行業の収益がなかなか上向かなかったのは上記の根本的な要因があります。
個別要因:システム障害の多発
先ほどの預貸金利差の縮小は銀行業全体の問題でした。しかし、みずほ銀行特有の問題もあります。
それが頻発する「システム障害」です。
銀行において信用は一番重要なものです。みずほ銀行はシステム障害を何度も起こして信用を毀損し大切な顧客を失ってしまっています。
あまりにも頻発するので金融庁から業務改善命令をうけてしまいました。
どんなに手を尽くしても、システム障害やセキュリティー事故をゼロにはできない。危機管理広報の専門家によれば、インシデントが発生した際、企業にとって重要なのは、迅速で顧客目線を持った情報開示だという。
その事実を世に知らしめた顕著な例が、みずほ銀行のシステム障害における情報開示である。同行は2021年2月から2022年2月までの約13カ月間に合計11回のシステム障害を起こした。金融庁は2021年11月26日にみずほフィナンシャルグループ(FG)と同行に業務改善命令を発出した際に「社会インフラの一翼を担う金融機関としての役割を十分に果たせなかったのみならず、日本の決済システムに対する信頼性を損ねた」と厳しく指摘するほどの社会的な混乱を招いたといえる。
参照:日経XTECH
上記は直近2021年の例ですが、それ以前にも頻発していました。
そもそも2020年に「みずほ銀行システム統合、苦闘の19年史」という本が出版されています。つまり2001年からずっとシステム障害に苛まされていたのです。
これだけ長期間、システム障害を起こしていたら個人の顧客だけでなく、法人顧客にも見放されてしまいますよね。
メガバンクの中で一歩で遅れている大きな要因となっています。
みずほ銀行の今後の株価の見通しとは?
重要なのは今後の見通しです。
みずほ銀行の株価が上昇するとしても筆者は2023年一杯が限度と考えています。理由はべいこくを中心としたグローバルリセッションが発生する可能性が高まっているからです。
今は日本でインフレが発生して金利が上昇しつつあり銀行にとって追い風が吹いています。
しかし、不景気になると再び金利は地を這い続ける状態に戻ります。日本だけでなく海外の金利も大幅に低下します。
すると当然、貸し出し需要も減りますし金利も低下するので収益は大打撃となります。
結果として世界的に銀行株の業績がまた低迷して株価が下落していく結果となります。
つまり、ここから「みずほ銀行」に投資をするということは景気後退とのチキンレースをすることになるのです。