近年、日本の金融リテラシーの高まりから、様々な投資先が検討されるようになった気がします。
少し前までは投資といえば、日本株、FX、投資信託のみの選択肢の中で資金を投下し、いまいち資産を増やせなかったという人が後を絶ちませんでした。
しかし、現在は米国株や新興国株、国内ヘッジファンドなど選択肢が増えました。
特に、国内ヘッジファンドはとても身近な存在になってきたように思います。
ヘッジファンドとは、投資信託などと異なり大々的な広告を行わず、資金を集め高いリターンを目指す私募(プライベート)ファンドです。
知らないと地獄・・・投資信託は儲からないのはなぜ?本当におすすめの運用先とは。公募ファンドの仕組み/日米の公募投信のコスト比較 / 信託報酬(手数料)とリターンの関係
今日の記事では「ヘッジファンドとは何者なのか?」という点の概要と「公募ファンド」「私募ファンド」の違いを網羅的に解説していきたいと思います。
最後に、どのような人が公募・私募ファンドがおすすめなのかも触れています。
ヘッジファンドとは何者なのか?
「ヘッジファンド」と聞くと、テレビや新聞などの影響からか株式市場で大胆な取引を行い、巨額の利益をあげている。
または、アジア通貨危機などが代表例となりますが自社の利益を最優先に考えなりふり構わない運用を行う事業体というイメージが強いようです。
たしかにヘッジファンドは「絶対収益型」のファンドとして、市場の状況を考え柔軟に投資ポートフォリオを組み替え利益を追求していきます。
これは出資者からするととても心強いですよね。
また、ヘッジファンドの取引が理由で不況に陥るほどのことはなかなかなくアジア通貨危機のような事象はレアケースでしょう。
ヘッジファンドは「私募ファンド」です。宣伝などを行わず基本的にはまとまったお金のある富裕層を中心に資金を集め運用を行っていく事業体です。
上記の財務省の資料にIMFのレポートでヘッジファンドは「市場の変動に対して柔軟に対応できるため「安定的投機」という機能を果たす」としています。
これが、ヘッジファンドの最大の特徴です。
ヘッジファンドは下落相場でも損失を抑え、時にはリターンをだすことで安定性を重視する年金基金などの機関投資家から重用されるようになりました。
以下はS&P500指数ですが通常の株式市場に投資を行うと以下の通り頻繁に暴落に巻き込まれることになります。
保険会社や年金基金などの資金を大きく減らすことができない機関投資家は市場の変動を抑制することについて高いニーズがあります。
その役割を担っているのがヘッジファンドなのです。ヘッジファンドは以下の通り市場の変動を抑えながら安定して高いリターンを残しています。
そのため、ヘッジファンドの運用残高は以下の通り右肩上がりに上昇しています。
また、ヘッジファンドの特徴として挙げられるものに手数料体系が挙げられます。
ヘッジファンドの手数料体系は基本的に、運用で上げたリターンから得る成功報酬型の手数料を採用しています。
パフォーマンスが良ければ報酬も大きく上昇するので、顧客と同じ舟にのっている(=セイムボート)の状態にあるといえるでしょう。
結果を出さなければ報酬が出ない分、運用の真剣度が異なります。
公募ファンドとは?
上記まではヘッジファンドの概要について紹介しました。
ここからは具体的に公募ファンドと私募ファンドの違いについて解説していきたいと思います。
公募=公で募集しているということですね。公募ファンドの代表例が投資信託です。
というより、ほぼ投資信託といっても差し支えないでしょう。REITなども公募ファンドですが、そもそもREITの正式名称は不動産投資信託ですからね。
ただ注意して欲しいのですが、投資信託の中でも皆が買えるわけではない私募投信というものもあります。私募投信はファンド・オブ・ファンズ形式の投資信託などに組み入れられています。
ヘッジファンドは私募投信の中の証券投資法人に分類されています。
投資家は投資信託が出している「目論見書」で運用方針を確認し、お金を預けることを意思決定していくことになります。
各投資信託のファンドマネジャーに自分の資金を託すことになります。購入手数料と、運用報酬という手数料を支払う必要があります。
但し、後述しますが日本の投資信託の成績はお世辞にもリターンが高いとはいえません。
以下は投資信託の2018年から2022年のリターンですが、ブル相場だったにも関わらず平均リターンは2.6%という低い成績になっています。
ここまでですでに理解の早い人は勘付いているかもしれません。
投資信託は手数料ビジネスであり、ビジネスモデル的に高いリターンを出す必要はありません。
より多くの資金を顧客から預かれば、預かり資産に応じて信託報酬を得ることができます。
リターンを出すことよりも、多くの資産を預かることに重点をおいた商品設計が行われているのです。
そのため、大手の証券会社、銀行などが大々的にホームページやテレビで宣伝していきます。
セミナーを開いたり、目論見書などで投資方針やポートフォリオを公表して、個人投資家を集めます。
最近話題になっていたCMは中井貴一、真田広之、柳沢慎吾が出ていたこれですね。
松井証券もサラリーマンの心情を捉えたCMを流しています。
過去に遡ると、2006年の郵便局の投資信託のCMもありました。1万円から分散投資、プロに任せよう、と非常にシンプルですね。どれくらい資金を集めたのでしょうか。
公募ファンドは上記のようなCMのみならず、電車の吊革広告、雑誌広告、有名なビルの看板などありとあらゆるところで宣伝をしています。
大手媒体で投資家を集め、オススメの投資信託を提案し、個人投資家に商品を購入してもらい購入手数料と信託手数料を取る。
そしてリターンが悪化したら、乗り換えを提案して再び購入手数料を取る。
これが公募ファンドのビジネスモデルです。
公募するからには、やはり怪しい商品を売ってはいけません。
大々的に宣伝し、資金を集め、ファンドがその資金を持ち逃げなど絶対あってはならないことでしょう。
公募するからには、金融庁の審査を受け厳しい規制の中で募集して運用することが求められます。
つまり、投資方針を市場の動きに応じて柔軟に迅速に変更することなどには向きません。
審査に時間がかかるし、リスクの高い運用も規制により封じられます。
加えて、公募ファンドは運用会社を管轄する金融当局や金融商品取引法などによって情報開示や配当などについて規制を受け、これまた自由度が制限されていますね。
金融庁や顧客対応などに追われてファンドマネージャーも運用に集中できない状況になっています。
実際、筆者の友人にも大手の運用会社で投資信託のファンドマネージャーをしていますが、半分以上を運用とは関係ない業務に割かれているそうです。
あくまで、運用のプロというよりサラリーマンとしての側面が強いということですね。
私募(プライベート)ファンドとは?
一方、ヘッジファンドならの私募ファンドは宣伝などを行うことができません。富裕層コミュニティなどのみの中で話が回ってくるような存在です。
公募は行っておらず、テレビや雑誌などで目にすることはまずありません。
私募ファンドはなかなか公に出てこないので、投資すること自体が難しいです。
しかし、信頼できる私募ファンドに出会うことができればぜひ運用を任せたいところです。
私募ファンドで代表的なものに、ヘッジファンド、プライベートエクイティファンド(PE)、私募REITなどがあります。
以下は私募投信と公募投信の純資産残高の推移の比較です。
2015年以降、大きく私募投信の残高が伸びています。公募ファンドより私募ファンドの方がリターンが高いと判断する投資家も増加しているように感じます。
上記で公募ファンドは公に宣伝し多くの投資家を集めることができる、その代わりに市場の敏感な動きに合わせて投資方針を変更できないという弱点があると話をしました。
私募ファンドは公に宣伝ができない代わりに、規制に縛られず、柔軟に投資方針を変更し、高いリターンの追求ができます。
(空売り、デリバティブ取引、為替予約なども自由に対応、公募は制限あり)
この規制に縛られず自由に投資方針を変更できるというのは非常に大きなメリットです。
2020年に限って言えば、コロナショックが発生し、株式市場は大暴落しました。
しかし、そこから株式市場はV字回復、2020年8月現在は金(gold)などコモディティが強気相場となっています。
このように短期間で相場の顔色が大きく変わる中で、規制に縛られ投資方針の変更に時間のかかる公募ファンドで大きなリターンを出すのは難しかったでしょう。
ファンドマネジャーがいくら優秀でも厳しいものがあります。
新型コロナが影響する相場では、柔軟な投資方針の変更が大きな強みになるのです。
公募ファンドと私募ファンドの違いとは?
上記までとりとめもなく解説してきましたが、追記含めまとめると以下の通りです。
公募ファンド:
- 証券会社や銀行、保険会社などが様々な宣伝手法を活用し不特定多数(50人以上)の投資家を集める
- 投資家は少額から出資可能
- 運用成果に関わらずファンドの純資産に対して一定の信託報酬がファンドの手数料として発生
私募ファンド:
- 私的な募集により大口投資家を中心に資金を集める
- 運用における制限が緩い
- 投資家は出資にまとまったお金が必要(国内は最低出資額が1000万円〜等)
- ヘッジファンドであればハイリスクハイリターンを目指す運用形態(成功報酬型)
公募ファンドがおすすめな方はどんな人?
公募ファンド、いわゆる大手金融機関が大々的に宣伝して投資家を集める形態のファンドがおすすめな方は以下の通りです。
公募ファンドがおすすめの人
- 少額から投資したい
- 大手金融機関が運用という安心感が欲しい
- 指数連動型の投信を購入したい
大手金融機関が運用している投資信託だからリターンも高いはずだと思う人がとても多いのが現状です。これはある意味非常に深刻な問題だと思っています。
大手が募集している投資信託であれば、米国S&P500などの株式市場が成長し続けるインデックス型投信の購入をおすすめします。
関連:アクティブ運用型とパッシブ運用型の投資信託のどちらが優れているのか徹底比較!インデックス投資は本当に最強なのか?
emaxis slim 米国株式(s&p500)などが良さそうですね。(ETFですが)
リーマンショック、チャイナショック、コロナショックなどありましたが、米国の株式市場は成長を続けています。
2024年以降は停滞期に突入する可能性が高まってはいますが、超長期でみると大きなリターンをあげてくれることでしょう。
投資信託には上記のS&P500など指数をベンチマークとするインデックス型(パッシブ)、指数をアウトパフォームすることを目指すアクティブ型の2種類があります。
高いリターンを目指したい投資家の方はアクティブ型を選ぶべきですが、日本のアクティブ投信の運用は散々な結果になっています。
市場平均以上の収益をめざす「アクティブ型」の投資信託は、平均並みをめざす「パッシブ型」より運用成績が悪い。そんな報告を金融庁がまとめた。アクティブ不振の一因は、運用報酬で運営費用すらまかなえない小規模な投信の乱立。その背景には、販売会社と運用会社の強固な結びつきという独特な業界構造がある。
指数を超えるパフォーマンスを狙いたい方はアクティブ型の投資信託ではなく、私募ファンドでの運用を検討した方が良いでしょう。
私募ファンドがおすすめな方はどんな人?
もうすでに上記の公募ファンドがおすすめな方についての話で網羅してしまった感じがしますが、以下の通りです。
私募ファンドがおすすめの人
- すでにまとまった資金がある
- 多少リスクをとってでも、指数を超える大きなリターンを目指したい
- 手数料ビジネスではない、成果報酬型で運用するファンドマネジャーに出資したい
なかなか私募ファンドに投資できる機会を見つけるのは難しいですが、ヘッジファンドの公式ホームページは存在するので、問い合わせは可能です。
私の場合は、社会人になってから、会社の同僚の先輩がヘッジファンドを運営しており、公私含め長い付き合いとなっており、運用方針にも共感できたので資金を預けています。
すでに運用を任せて10年になりますが、納得のいく結果で推移しています。
まとめ
公募ファンドと私募ファンドの概要とそれぞれの違い、またどのような人にそれぞれのファンドがおすすめなのかを解説しました。
日本の金融リテラシー向上のため、私は資産運用についての発信をはじめましたが、今後も引き続き様々な知見を共有していきたいと思います!
以上