資産・貯金「5000万円」というのはセミリタイアも頭をよぎるほどの大金です。
丁度、準富裕層と言われる水準になります。しかし、まだまだセミリタイアやリタイアを考えるには早計とされる金額帯でもあります。
完全にリタイアするには老後どれだけ費用が掛かるかわからないし、出来れば倍の1億円まで増やしたいなと思われる微妙な金額だと思います。
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直近、資産運用として注目されているのがインデックス投資です。
2010年から2021年に高いリターンをだした米国株のインデックス投資1本でポートフォリオを組成している方は多いのではないでしょうか?
しかし、インデックス投資には多くの方が認識していない落とし穴もあります。場合によっては大きく資産を減らしてしまうことになります。
5000万円の大金ですから、一発の大暴落で数千万円を失ってしまうリスクもあります。元本が大きくなると資産増加が加速しますが、下落も加速することは忘れてはなりません。
下手に運用してしまうとあっという間に大事な資産を失ってしまいます。
本日はそんな方に向けて、5000万円を安全に安定的に年率10%で運用する方法を紹介していきたいと思います。
→ 個人投資家が狙うべき利回りはどれくらいが最適?年利10パーセントを超える資産運用方法はあるのかを考察
参考にするのは米国の一流大学が運用する基金です。
今回は20年間平均年率12.1%を出しているイェール大学に類似したポートフォリオを作り、年率10%以上の利回りを狙う投資手法について紹介していきたいと思います。
インデックス投資(S&P500指数連動投信)に潜むリスクとは?投資していれば確実に増えるわけではない!?
近年の好調なインデックス投資の実績をうけて2020年から2021年にかけて米国のインデックス投資がブームとなりました。
実際、筆者の出身地の地方の鳶職の方も米国株インデックスを始めたと2021年末に帰省した時におっしゃっていました。
それを聞いた時「危険だな」と感じましたが、実際そのあと大きく下落していきています。ナスダックは2022年は30%以上の暴落となりました。まさに靴磨きの少年ですよね。
1929年の夏、ケネディが靴磨きの少年に靴を磨いてもらおうとしたときのこと。少年は米紙ウィール・ストリート・ジャーナルを読んでいて、株取引に夢中でした。ケネディに対して自慢げに、推奨銘柄を教えたりなどします。この少年との出会いで、ケネディは相場撤退を決意したと伝えられています。
バルークにも、似たようなエピソードが残っています。この時期に、自宅近くでホームレスのような老人に呼び止められて、「いいネタがあるけどどうかね?」と、耳元でささやかれたというのです。株の購入を薦められたというわけです。バルークもこの老人との出会いで、相場がこれ以上、上がることはないと確信したと伝えられています。
この2人は「暗黒の木曜日」の前に、保有していた株を売り抜けていました。「暗黒の木曜日」に至るまで、アメリカの株式市場はバブル状態にありました。その間に2人とも、かなりの資産を築き上げていたのですが、その資産を守り抜いたわけです。そればかりかケネディは株価暴落の過程で空売りを仕掛け、大もうけしたといわれています。
ここから何故インデックス投資一本足戦略が危険なのかをお伝えしていきます。
あくまで超長期の平均リターンが7%
インデックス投資をしていれば常に一定でお金が増えるわけではありません。あくまで株式市場の平均リターンが7%なだけで、毎年同じ割合で増えるわけではありません。
以下の通り株式は停滞期と上昇期を繰り返しながら長期的に平均して7%のリターンを出しているのです。
上記の通り1990年代は急上昇し、2000年代はITバブル崩壊とリーマンショックで10年以上も株価水準は停滞しました。
その後、中央銀行であるFRBの金融緩和に支えられて株価は2010年代から2021年末まで上昇していきました。
しかし、現在は金融緩和のドーピングは終わり逆にインフレを抑制するために金融引き締めにおフェーズに移っています。
金融引き締めとは政策金利を引き上げて経済を冷まし企業収益を減退させます。更に金利が高くなると債券の魅力が高まるので株式の魅力が薄まり株価は下落していきます。
まさに、ここから暫く株式は暗黒の時代に突入しているのです。
ここから暫くインデックス投資は厳しい局面に突入していくことになります。
実際、10年間、米国のS&P500指数に継続して投資した場合の年率平均リターンは以下となります。
10年間投資した結果、平均年率4%のマイナスリターンとなることも多々あるのです。
つまり10年投資した結果40%-50%資産を失う可能性があるということですね。特に2024年以降も、その確率が高くなっているのです。
そもそもですが、2020年のCovid19以降、世界は大きく変化し加速しています。そもそも株式市場が数十年単位で今と同じ状況を維持するのかを考える必要があります。
米国はGAFAMという成長ドライバーを失いつつもまだ過去のようなリターンを提供するのかなど、不透明な部分があまりにも多いですね。
20年前はドットコムバブルで、比較的米国の成長ドライバーがわかりやすく見えていたため投資しやすい環境ではあったと聞きます。
その後にリーマンショックなどはあれど、それを乗り越えてきました。現在は成長ドライバーがありません。
そして何よりも注意を払わないといけないのが世界中で粘着している高インフレです。
2010年代は金融緩和によって世界的に株価が上昇していきました。つまり2010年代の株価上昇はカンフル剤によって引き上げられていったのです。
しかし、当然副作用は生じます。バラマキ続けたことでインフレが発生してしまったのです。
2021年末から発生したインフレは2023年になっても収束の兆しがみえていません。
インフレが発生すると金融引き締めを中央銀行が行うので株式市場は大きく下落していきます。
以下は現在と同じインフレが発生した1970年代のS&P500指数の値動きです。
インフレが何回にもわたって押し寄せ株価は右往左往しながらリターンはなしで10年間終了しました。
インフレは一度発生すると何度も粘着していきます。
2020年代も同じ轍を踏むと10年間リターンがないという最悪のケースも存在しないといけない可能性も出てきます。
今後円高となるリスクが高い
更に現在は究極に円安が進んでいます。日本円建で投資できる「楽天VTI」や「eMAXIS Slim 米国株式」などは一見日本円建にみえますが為替レートによって大きくリターンが左右します。
あくまでドル建のインデックスを円に直して表示しているだけで、実質ドル円の為替リスクを負っていることになるのです。
つまり、ドル円が上昇すればインデックス投資の円建のリターンは上昇し、下落すれば円建のリターンは下落するのです。
ドル円は150円近くまで究極的にドル高円安が進展しました。現在2023年は135円水準となっていますが、不況到来の足音と共に、円高はほぼ確実に進むものと考えられます。そもそも米ドルから新興国へ資金が移っているというニュースも増えてきました。
直近のドル円の増加は日米の金利差に起因しています。今までは政策金利の引き上げで上昇してきましたが、ここからは景気後退を織り込んで金利は下落することが見込まれます。
すると、今まで上昇してきたドル円も急速に巻き戻していきます。今から円建のインデックス投資をするのは、かなり割の悪いベットであると言わざるを得ません。
そこで参考にすべきポートフォリオとして実績あるエンダウメント流の投資戦略を紹介していきたいと思います。
エンダウメント投資戦略とは? どんなポートフォリオなの?
日本にはあまり大学基金という考えが浸透していません。
一方、米国では卒業生が資金を出し合い、大学が運用を行い大学の研究費や人件費などにあてられています。
実際イェール大学は運営費の30%を基金から拠出しています。
社会の為にも十分な研究費が捻出できる仕組みということもあり、是非とも日本でも取り入れたほうがよいシステムだと思います。
以下はイェール大学の長期リターンですが、S&P500指数が20年の平均年率7%なのに対して、イェール大学は5%以上も高い20年平均12.1%のリターンを挙げています。
同じく優秀なパフォーマンスを挙げているハーバードの投資成績をも20年平均で約2%程度オーバーパフォームしているのです。
仮に5000万円を年率12.1%で運用したら、以下のように驚異的なスピードで資産が成長していきます。
6年後:9922万円 (約1億円)
10年後:1億5688万円
15年後:2億7736万円
20年後:4億9100万円
それでは、非常に優秀な成績を残しているポートフォリオを見てみると伝統的な株式や債券はたった 21.5%しか占めていません。
後で説明しますが、最大ポーションのヘッジファンドやベンチャーファンド、更に不動産、商品というオルタナティブ投資を合わせると78.5%にのぼります。
イェール大学のポートフォリオ | |
米国株 | 2.25% |
米国以外の株式 | 11.75% |
未公開株 | 17.50% |
ベンチャーキャピタル | 23.5% |
ヘッジファンド | 23.5% |
不動産 | 9.50% |
商品(金、原油) | 4.50% |
債券 | 7.50% |
それではイェール大学のポートフォリオを5000万円という資産を用いて組成していきます。
公開株ポーション:全世界に投資できるVTに1000万円
イェール大学にとっての国内株である米国株を2.25%と米国株以外を11.75%を組み入れています。
ここでは単純のために20%分の1000万円分を世界の上場株に投資をします。
皆さんが個別銘柄についての見識があるのであれば各人が銘柄を分析して組み入れればよいのですが、なかなか世界の個別銘柄に精通している方はいらっしゃらないでしょう。
全員におすすめできるのが全世界の株式に一括で投資することができるバンガード社のETFであるVTです。
市場平均に連動するパフォーマンスを目指すにはバンガードのETFが手数料が低く尚且つ乖離率が低く非常に有名です。
VTは楽天証券やSBI証券などの大手証券でも購入することができます。
ただ、VTの中の60%は先ほどお伝えした米国株で構成されています。更にその他の日本株や欧州株も米国株におおむね連動するパフォーマンスとなります。
これから、先ほどお伝えしたように全世界的に株式市場が軟調に推移されることから不安定なリターンになることは想定しておきましょう。
債券ポーション:米国債券ETFのTLTに500万円
株式投資と同じく伝統的投資の一種である債券投資について7.5%については、単純のために10%分の500万円分とします。
この500万円分については債券ETFであるTLTを推奨します。
債券ETFは金利が上昇すると価格が下落し、金利が下落すると価格が上昇します。(次の項目のコラムで説明)
そして、これから世界的に景気が後退して長期金利が下落する局面では債券ETFの価格は上昇することが見込まれます。
景気後退となると株価は下落するので、株価の下落のクッションとして活躍することが期待されます。
因みに債券と株式は非常に組み合わせの相性がいいことが歴史的に証明されています。
青:株式100%
赤:債券50%+株式50%
ここから安全性を重視した胃という方は株式の比率を減らして、債券の比率を高めてもいいかもしれません。
保守的にいきたい方はVTとTLTを750万円分ずつにしてもよいでしょう。
コラム:なぜ金利が下落すると債券価格は上昇するのか?
先ほど金利が上昇すると債券価格が下落して、金利が下落すると債券価格が上昇するという説明を疑問に思われたかたが多かったかと思います。
金利が低くなれば価値も下がるというのが一般的な感覚ですよね。
しかし、実際は金利が下落すれば債券の価格は上昇します。以下はわかりやすい図です。
現在金利が3%の債券を保有しているとします。金利が2%に下落したら、現在保有している金利3%の債券の魅力が上昇するので価格が上昇します。
一方、金利が4%に上昇したら、現在保有している金利3%の債券の魅力が下落するので価格が下落します。
よって、金利が上昇すれば現在保有している債券の価格は下落して、金利が下落すれば現在保有している債券の価格は上昇するのです。
現在、米国の急激なインフレをおさえるために米国の中央銀行が政策金利を急激に引き上げています。結果として長期金利も以下の通り急激に上昇しています。
しかし、今後経済が後退する局面では金融緩和を見越して金利は下落に転じます。
景気が後退する懸念が台頭した時に株価は下落しますが、一方で金利は低下するので債券価格は上昇します。
両方を保有しておくことで補完することができるのです。
オルタナティブファンドのポーション:ヘッジファンドに3000万円
それでは愈々イェール大学のポートフォリオの中で最大ポーションを占める、
PEファンド17.5%とベンチャーキャピタル23.5%とヘッジファンド23.5%のポーションが概要します。単純のために60%分の3000万円分を考えます。
これがエンダウメント流のポートフォリオの肝となる部分ですね。
そもそもオルタナティブ投資とは?
オルタナティブ投資が何故注目されているのかというと、
理由は二つあり、まず一つ目は株式・債券との価格の連動性が低いことです。
ポートフォリオを組むにあたっては、資産の相関性が低いものを組み合わせることによって、
ポートフォリオ全体の安全性を高める必要があるのです。
→ 資産分散を行い市場平均をオーバーパフォームする投資ポートフォリオを組成する為の考え方とは?エンダウメントの投資手法を参考にしよう!
また最も重要なことなのですが、中長期的に株式のパフォーマンスを上回っています。
イェール大学やハーバード大学が書状平均よりも高い成績を誇っている立役者ということができるでしょう。
ヘッジファンドとは?-結局投資信託が何が違うの?-
ヘッジファンドは上場株式だけに留まらず、債券、為替、商品など様々な手段を用いて、
また購入だけではなく売から入る空売りという手段も用いたりして、どのような市況環境でも収益獲得を目指す絶対収益型のファンド形態です。
実際、市場平均よりも高い成績を下落を抑制しながら安定的に成し遂げています。
また収益を挙げた分から手数料を徴収する成功報酬型の手数料形態をとっているという点と、
腕利きの独立したファンドマネージャーによって運用されているという点が異なります。
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ベンチャーキャピタルやPEファンドとは?-ヘッジファンドとは何が違うの?-
PEファンドは投資対象が未公開株式に限定していることに最大の特徴があります。
PEファンドは未公開株の経営を握るポーションを取得、時には丸ごと買収し、
経営に積極的に携わり、企業価値を向上させた後に、購入時価格より大幅に高い価格で売却することにより利益を得る特殊なファンドです。
なかなか、特殊なファンド形態で日本人の個人投資家が投資できるファンドはありません。
ベンチャーキャピタルは同じく未公開株に投資をするファンドですが、ベンチャーキャピタルが投資をするのは成長未上場企業です。
通常のPEファンドは安定した企業に投資をしますが、ベンチャーキャピタルは上場を目指す企業に投資をすることを目的とします。
個人投資家が投資できる対象として上場ベンチャーキャピタルであるJAFCOがあります。しかし、JAFCOの経営成績は芳しくなく、株価も低迷しておりあまり投資妙味はありません。
オルタナティブファンドとしてBMキャピタルへ投資を推奨
ポートフォリオの核をなすオルタナティブファンドとしてBMキャピタルを推奨します。
BMキャピタルは老舗のヘッジファンドで、暴落局面での価格下落をおさえ過去一度も年間ベースでマイナスを出していません。以下がBMキャピタルの特徴です。
さらに、年率10%以上のリターンを叩き出してくれており、安定運用には欠かせない存在となっています。
筆者のポートフォリオの核をなすBMキャピタルについては以下で詳しく解説していますので参考にしていただければと思います。
その他ポーション:現金で500万円分をとっておく
残りの500万円分についてはあえて投資をせずに現金でとっておくことをおすすめします。
どのようなファンドでも少しは待機資金として現金を保有しています。
現金があれば、株価が下落するときに買いましを行うことができるからです。
リターンを高めるためには大切な考え方です。
5000万円を10%以上の市場平均を大幅にアウトパフォームしたポートフォリオのまとめ
今までの点から市場平均を大幅にアウトパフォームした成績を長年出し続けるポートフォリオについて纏めると以下のようになります。
株式(VT) | 1000万円 |
債券(TLT) | 500万円 |
ヘッジファンド(BMキャピタル) | 3000万円 |
現金 | 500万円 |
最も重要な点はオルタナティブ投資を多く組み入れることといえるでしょう。
以上、