「楽天日本株4.3倍ブル」というすごく儲かりそうな名前の商品が存在します。
楽天証券の投資信託の買付金額を見るとなんとベスト3にランクインしています。
1位は全世界の株式に連動するオールカントリーで、2位は米国の株価指数に連動するeMAXIS Slim米国株式(S&P500)です。
インデックス投資の全盛期を感じさせる結果ですね。そして、今回取り上げる楽天日本株4.3倍ブルは買い入れランキングで第6位になっています。
さて、肝心の第3位ですが、楽天日本株4.3倍ブル。
この商品は単純に買えば日経平均の値上がりの4.3倍になると期待して購入している方も多いと思います。
しかし、結論から申し上げるとそうはなりません。寧ろ楽天日本株4.3倍ブルのようなレバレッジ投信はリスクの高い商品として筆者はおすすめできません。
なぜ、危険だといえるのか?
知られざるレバレッジ型投信の仕組みについて詳しくお伝えしていきたいと思います。
楽天日本株4.3倍ブルとはどんな商品なのか
目論見書の表紙から醸し出す無敵感。これはとても儲かりそうです。期待大ですね。
[楽天日本株4.3倍ブル]
- 設定日:2015.10.07
- 純資産:321.37億円
- 決算日:6月(年1回)
[商品分類]
- 単位型・ 追加型:追加型
- 投資対象 地域:国内
- 投資対象資産 (収益の源泉):株式
- 補足分類:特殊型(ブル・ベア型)
[属性区分]
- 決算頻度:年1回
- 投資対象 地域:日本
- 特殊型:ブル・ベア型
[分配方針]
- 毎年6月15日(ただし、休業日の場合は翌営業日)に決算を行い、収益分配方針に基づき分配を行う。
- ただし、将来の分配金の支払いおよびその金額について保証するものではない。
交付目論見書:https://www.rakuten-sec.co.jp/web/fund/scr/common/display.asp
補足分類の「特殊型(ブル・ベア型)」ですでに強いですね。
ブルは強気相場、ベアは弱気相場を一般的に指しますが、楽天日本株4.3倍ブルは上昇相場でリターンを獲得していく商品になります。
[ファンドの目的]
当ファンドは、わが国の株価指数を対象とした先物取引(以下「株価指数先物取引」といいます。)を積極的に活用することで、日々の基準価額の値動きがわが国の株式市場の値動きに対して概ね4.3倍程度となることを目指して運用を行います。
[ファンドの特色]
株価指数先物取引* を活用し、日々の基準価額 の値動きが、わが国の株式市場全体の日々の値 動き(日々の騰落率)の概ね4.3倍程度となること を目指して運用を行います。 *利用する株価指数先物取引の種類は、流動性、効率性等を 勘案して決定します。
純資産総額の概ね4.3倍程度を国内株式で増やしていくという方針です。米国のTECL、TECS、TQQQあたりと同様の存在感ですね。
どのような株を購入してるのか、純粋に気になります。以下はファンドの仕組みです。
楽天日本株4.3倍ブルの投資対象やポートフォリオ
さて、では楽天日本株4.3倍ブルはどのような投資をしているのでしょうか?
大まかな方針は以下の通りとなっています。
当ファンドのポートフォリオ
わが国の国庫短期証券(含む現先)や高格付のコマーシャル・ペーパーを組み入れるとともに、日経225先物取引の買建額を、日々の純資産総額に対して概ね4.3倍程度に維持する運用を行ってまいりました。
参照:交付目論見書
高格付のコマーシャル・ペーパーと日経225先物取引の買建に投資し、純資産の概ね4.3倍程度を目指すとされています。
以下の通り、日経平均先物指数に約430%のレバレッジをかけていますね。
「4.3倍ブル」の意味を正確に理解しよう!レバレッジは単純ではない?
4.3倍ブルと聞いて単純に日経平均の4.3倍のパフォーマンスになると誤解している方が多いのではないでしょうか?
実はこれは大きな誤りです。その点について詳しく説明していきます。
レバレッジをかけることの意味
○倍レバレッジのイメージは以下の通りです。以下は3倍の場合を説明しています。
ブル3倍型ファンド | ベア3倍型ファンド | |
ファンドの運用 | 株価指数先物の買建てをして指数の値動き | 株価指数先物の売建てをして指数の逆の値動き |
株価指数が10%上昇 | 基準価額30%上昇↑↑↑ | 基準価額30%下落↓↓↓ |
株価指数が10%下落 | 基準価額30%上昇↓↓↓ | 基準価額30%下落↑↑↑ |
ブル3倍型ファンドであれば、株価指数が10%上昇したら30%上昇します。
対象とする指数が10%上昇したら30%上昇するということですね。
楽天日本株4.3倍ブルであれば、日本株の上昇が10%であれば43%上昇します。
同じ分類で販売されている楽天日本株トリプルベアであれば日本株が10%下落すれば30%下落することとなります。
「レバレッジをかける」というのはアップサイドを見込めますが、大幅なダウンサイドも覚悟するべきであることを理解しておきましょう。
その覚悟を飲み込んで勝負をする類の商品が楽天日本株ベア4.3倍です。
レバレッジは1日の値動きに対してかかっている
ここまでは皆さんの理解と同じだと思います。
しかし、レバレッジがかけられているのは1日の値動きでのレバレッジです。1日で10%変動した場合43%、という感じです。
10日、1か月と期間が長くなってくると結果が変わってきます。1か月かけて10%上昇したからといって、楽天日本株ブル型4.3倍は43%になる訳ではありません。
まずブル相場の場合ですが楽天日本株4.3倍ブルは4.3倍以上になります。
以下の通り2日後に日経平均が20%上昇した場合は、楽天日本株4.3倍ブルは98.9%上昇しています。4.3倍であれば86%の上昇になるので単純な掛け算を上回っていますね。
一方、ベア相場の場合は指数の4.3倍ほどは下落しません。
以下の通り2日で20%下落した場合は、4.3倍ブルは70.2%の下落にとどまっています。単純に4.3倍かけると86%の下落になりますからね。
とはいえ、いずれにせよ非常に大きな損失であり立ち直れませんが。
そして重要なのは相場が横ばいの時です。4日が経過したあとに指数が元の価格に戻ってきたとしても楽天日本株4.3倍ブルは26.6%(100→73.4))の下落となっています。
つまり、停滞相場であったとしても大きく下落することを覚悟しないといけないのです。
楽天日本株4.3倍ブルの運用実績と利回りとは?
それでは、気になるパフォーマンスを見てみましょう。直近の日経平均の急上昇で急騰していますね。
1-3月期 | 4-6月期 | 7-9月期 | 10-12月期 | 1-12月期 | |
---|---|---|---|---|---|
2023年 | 36.05% | 99.04% | -17.37% | 16.17% | 159.94% |
2022年 | -19.22% | -25.69% | -9.99% | -2.53% | -47.34% |
2021年 | 24.41% | -11.10% | 8.72% | -15.67% | 1.40% |
2020年 | -69.00% | 74.04% | 16.97% | 98.87% | 25.50% |
2019年 | 26.28% | -0.47% | 10.41% | 40.09% | 94.40% |
ちなみに2023年末までは以下の通り日経平均に負けていました。日経平均が横ばいの時に大きく下落していますね。これこそがレバレッジ投信の弱点です。
レバレッジ投信は明確なブル相場以外は投資するべきではないのです。
上記の期間でみると、日経平均が30%近く値上がりしているにも関わらず楽天日本株4.3倍ブルの基準価額は元本割れをしているのです。
局面によっては▲70%を食らっている時もあり、リスクだけが高くリターンは日経平均と同じになるという残念な結果になっています。
長期投資には全く向いていないですね。
楽天日本株4.3倍ブルの今後の見通しを予想
重要なのは今後の見通しです。先ほどお伝えしたとおりブル型のレバレッジ商品は指数が停滞並びに下落すると基準価額が下落します。
日経平均は2024年4月時点で40,000円を突破してバブル後最高値を更新しています。
これは主に欧米が金融引き締めに走る傍ら、日銀が金融緩和を継続することを新総裁の植田氏が宣言しているからです。
結果的に円安となり、海外投資家からみると割安さが際立つ日経平均先物への買いが殺到して昇竜拳となっています。
しかし、日本のインフレ率は米国に迫る勢いとなっています。
既にYCC政策は解除され、マイナス金利も撤廃されています。流石に国民生活も苦しくなっており通貨防衛のために利上げをする構えを見せています。
利上げがなされると日米の金利差が縮小するので円高に修正され、海外投資家の資金もはなれ急激に日経平均株価は下落することが想定されます。
急落リスクが高まっている局面でもあることは十分注意しておきましょう。
以下で、どのような環境でも安定したリターンを狙えるファンドについてまとめていますのでご覧いただければと思います、
掲示板やツイッターでの楽天日本株4.3倍ブルの口コミを拾ってみた
実際に楽天ブル型4.3倍を購入してる投資家の声をツイッターから拾ってみました。
以下はTwitterの口コミです。
うまく波に乗れた方もいる反面、残念ながら大きな損失を被って撤退したと後悔している方もいらっしゃります。
Twitter①
本日、保有していた投資信託を全て現金化しました。
底でブル4.3倍に変えていたので、戻りを含めて、コロナ前の投資元本は回収できました!
この現金は二番底への備えとして手元に残しておきます。
今月の貯金と合わせて30万円くらいは作れるか…
— 豪傑夫婦まつ&くろ@世帯収入630万からFIREへ (@k7g6taWeRtvEOOF) April 16, 2020
Twitter②
日本株ブル4.3倍がこの2日で23%あがった
25日のあたりまでは上がるかな
— 全ツッパ神 (@zmlp14202448) June 17, 2020
Twitter②
はい、私は1月になんとなくブル4.3倍投信買って、1ヶ月で70%余り減損して底値で切りましたorz
— 寝子の下僕(新カス連) (@uchineko_sobako) April 1, 2020
Twitter②
☑️投資を始めて最初の失敗
投資信託が良いとウワサで聞いて、
当時、楽天証券の投信値上がりランキング1位の
「楽天日本株4.3倍ブル」を「なんとなく」買い、
その後大きく下落して、一気に資産を25%くらい減らしました...😇
4.3倍ブル、ちゃんと調べるべきでした...#投資初心者
— ろき🐷料理と投資とモノづくり! (@rooookey1) September 22, 2020
有名なYahoo financeの掲示板では以下のような口コミが寄せられています。
Twitter②
確かにここからはリスクの割にはリターンがって感じですもんね。
いつもなら利確どころかベアに乗り換えってとこですが、まだトレンド転換とまではいかない感じなので。
Twitter②
まだ上がるかもと淡い期待をし、売り損ねてからの 暴落で。。。
やはり欲をかきすぎるのは良くないと勉強になりました。。。
正直いって、あまりレバレッジ型投資信託の仕組みを理解されていないんだろうなという投稿が目立ちました。
購入方法や手数料
購入方法は楽天の名前がついているので楽天証券やSBI証券から購入できることがわかります。解約もネット証券で実施すれば問題ありません。
気になる手数料ですが、以下の通りとなります。
購入手数料:3.3%(上限)
信託手数料:年率1.243%
ネット証券であれば購入手数料は発生しません。ただ、信託手数料はインデックス投信に比べると高いですね。
先物の手数料が発生するのでインデックス投信よりコストがかかっているわけですね。
まとめ〜ブル投信の買い時を考えよう〜
正直申し上げるとこの手の商品は投資とは言えず、非常にリスクが高いです。
しかし、楽天証券の買付ランキングで6位ということは、それくらい博打を打つ投資家が多いということですね。
日本は昔から賭け事が得意と言われていますからね。投資歴が長い筆者としては狂気の沙汰です。
どうしても楽天日本株ブル型4.3倍を購入するのであれば、まずは日経平均先物のレバレッジがない状態で練習をしましょう。
2倍のレバレッジでも値動きが荒く、なかなかメンタルをコントロールするのが難しいのが現実です。
4.3倍ものレバレッジをかけてしまったら停滞相場であっても大きく基準価額が下落してしまい気を失ってしまう可能性があります。
買い時としてはバブルが来ると確信できる時でしょう。
しかし、そんなタイミングは誰にも読めません。神様でも読めないのではないでしょうか。
そして、そのバブルと言えるタイミングは2023年末から2024年初にやりきってしまっています。
ここから楽天日本株4.3倍ブルに投資をするのはリスクが高いといっても過言ではないでしょう。
少額で遊び程度であれば良いですが、まとまった資金などで安定的なリターンを獲得するのであれば、
有望なファンドはいくらでもありますのでそちらを検討した方が良いです。
結局、長期複利運用が一番パワフルです。以下は安定して長期的に資産を形成していくことが望めるファンドをまとめたものです。
ご覧いただければと思います。