退職金はサラリーマンとして勤め上げた人に対する、会社から皆さんへのお礼として支払われる大きな報酬です。
また、同時に老後を楽しむためにも必要な資産でもあります。
実際に退職金をもらう60歳代以降に資産が集中しちえるのが以下のデータからも読み取れます。
普通は、一度に1000万円以上の金額を受け取ることは人生において経験がないことと思います。(遺産等を除いてですが)
退職金として受け取った大金をどう扱えばよいのか?
悩むのは必然的なことであると思います。
今回は退職金を運用する際に重要な考え方について解説した上で、退職金を運用するのにおすすめの投資信託をお伝えしていきたいと思います。
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退職金を運用する際に考えるべきこと
まず、退職金を運用する際に考えるべき点についてお伝えしていきたいと思います。
そもそも退職金はいくらもらえる?
まずいくら退職金がもらえるのか、ある程度把握しておく必要があります。
以下は厚生労働省(中央労働委員会)「令和3年賃金事情等総合調査」による退職金の平均額を示したデータです。
大学卒の総合職だと、メーカーで2342万円、メーカー以外で2563万円という金額になっています。
60歳以上の資産が多いにも頷けますね。子育てで貯蓄を切り崩したとしても最終的に退職金である程度回復できる仕組みになっています。
人生100年時代を考えるべき
2019年に老後2000万円問題が世の中を賑わせたのは記憶に新しいかと思います。
金融庁のデータによると2015年時点で60歳だった方が90歳まで生きる可能性は25%と推計されています。
つまり4人に1人は90歳まで生きるということです。
人生をいつ終えるかは誰にも予想できません。自分が長生きすることを前提としてライフプランを組み立てる必要があります。
豊かな老後を都会で送るには老後2000万円では不十分
老後2000万円問題は実は大きな問題点を孕んでいます。
以下は高齢無職世帯の家計収支ですが、不足分が5万4000円となっています。年間だと約65万円ですね。
年間65万円の不足分を60歳からの30年間を掛け合わせると1950万円となり、約2000万円となるという簡単な算出式で成り立っています。
しかし、ここで単純に上の表を見て疑問に感じた方もいらっしゃると思います。
わかりやすく生活費を実数に置き換えます。
食料 | 64,520円 |
住居 | 13,657円 |
水道・光熱費 | 19,309円 |
家具・家事用品 | 9,419円 |
被覆及び履物 | 6,593円 |
保険医療 | 15,541円 |
交通・通信 | 27,550円 |
教養娯楽費 | 24,960円 |
その他 | 53,924円 |
明らかに住居費用が13,657円と皆さんの肌感からかけ離れているかと思います。
地方で既に住宅を保有している方の固定資産税のみといったレベルですね。都会で賃貸をされている方は、ここにまるまる家賃が上乗せとなります。
仮に夫婦二人で15万円だとすると、年間180万円で、30年間で5400万円の負担増となります。さらに教養娯楽費25000円では、豊かな老後生活を送るのは難しいのではないでしょう。
追加で夫婦で5万円拠出すると30年間で1800万円となります。
すると、老後2000万円分に住宅上乗分5400万円と教養娯楽費1800万円を追加して9400万円と1億円近い資産が必要となります。
都会で既にマンションを購入して支払いが完了している場合でも教養娯楽費分は必要となります。
つまり最低でも4000万円-5000万円分は確保しないといけないのです。
いよいよ発生しはじめたインフレを加味する必要がある
1990年のバブル崩壊以降は日本はデフレスパイラルに陥っていました。
デフレというのはモノやサービスの価値が落ちることを意味しますが、言い換えると「お金」の価値が上昇する現象でもあります。
老後、現金を稼ぐことができない老人世帯としてはデフレは非常に有難いものでした。保有している金融資産の価値が何もしなくても上昇するわけですからね。
しかし、2022年から時代が変わりました。海外で発生したインフレが円安を伴って日本の輸入物価を直撃しました。
リーマンショック以降、先進各国を中心に金融緩和と財政出動を繰り返した結果として「お金」が流通しすぎて「お金」の価値が減少してしまったのです。
日本では政府の増税と社会保険料の増加で財政出動が弱かったこともあり内需主導でのインフレは発生しませんでした。
しかし、外国からのインフレの輸入という形でコストプッシュ型のインフレが発生しています。
インフレというのは粘着します。2023年に入り海外の物価は落ち着きつつあるにも関わらず、日本では値上げが毎月のように相次いでいます。
値上げが抵抗がなくなると、毎年のように値上げの波が訪れてきます。今後は最低でも2%程度のインフレが発生することを見込んでおく必要があります。
毎年2%のインフレが発生すると60歳の時に受けとった2500万円の退職金の価値は80歳になるころには1670万円になってしまいます。
つまり最低でも2%以上のリターンをだしていかないと退職金自体が目減りしていくことになってしまうのです。
4%ルールを活用し守りを重視しながら着実にリターンを出すことが肝要
上記のことから人生100年時代を念頭にインフレ発生を加味しながら退職金を増やしていくことが必要となります。
ただ、重要なことはあくまで守備に重点を置く必要があるということです。
老後のための資産なので守備力を重視する必要があります。
毎年不足分を拠出しながらも、退職金の元本を減らさずに生活していく必要があります。
資産運用の世界では4%ルールというものが存在します。
4%ルールというのは運用資産の4%を取り崩していくというものです。
退職金が2000万円で何も運用しない場合は80万円を毎年取り崩していくということですね。
80万円ずつ取り崩すと25年間は退職金で生活することができます。年金と合わせると十分な金額ですよね。
しかし、これだと25年間しか退職金が持ちません。人生100年時代を考えると運用でリターンをだしていく必要があるのです。
仮に4%程度のリターンを出せば退職金の元本を減らさずに精神状態を保ちながら生活を行うことができます。
安全性を重視しながら5%を目指した運用を行うことが重要になってくるのです。
それでは以下で老後におすすめできる投資信託をランキング形式でお伝えした上で、おすすめのポートフォリオをお伝えしていきたいと思います。
退職金を預けるのにおすすめの投資信託(ファンド含む)ランキング
では退職金を預ける上で適した投資信託やファンドをランキング形式でお伝えしていきたいと思います。
1位:下落体制抜群のヘッジファンド「BMキャピタル」
BMキャピタルは下落しないことを最優先しながらも、年率10%程度の高いリターンをもたらしてきた攻守共に優れたファンドです。
筆者のポートフォリオの主軸をなすファンドとなっています。2012年から運用が開始となっており老舗ファンドということも重要なポイントです。
先ほど申し上げた通り、退職金を運用する上で最も重要なことは下落をできる限り回避することです。
BMキャピタルは運用を開始してから8年が経過しています。その間、幾度となく株価が下落する局面がありました全て無傷で乗り切っています。
本家本流の王道ともいえる手法のバリュー株投資を行なっているので元本安全性が高い運用を実現できているのです。
→ バリュー株投資の真髄!BMキャピタルの投資手法を実際の事例を元にわかりやすく解説。
→ ネットネット株への投資だけではない!マルチストラテジー型ヘッジファンド「BMキャピタル」の運用手法とは?
そもそもヘッジファンドは株式市場の平均よりも低いリスクで高いリターンを出してきています。
BMキャピタルは以下のヘッジファンドインインデックスのように値動きを更に下落を抑えながら運用しているのです。
ファンドマネージャーを含めた運用チームは東京大学卒で外銀やコンサル、元財務省官僚などの錚々たるエリートで構成されています。
綿密な銘柄分析によって安全性が高く手堅いリターンが狙える銘柄に投資を行い、安全性を重視しながらも高いリターンを実現しているのです。
当然、金融商品なので元本保証ではありませんが、限りなく元本保証に近い運用を行いながら株式市場以上のリターンが狙えるのが魅力で実際に筆者も投資をしています、
まさに退職金運用にはもってこいの銘柄といえるでしょう。
2位:eMAXIS バランス (4資産均等型)
eMAXISバランス(4資産均等)は名前の通り4つの資産に均等にポートフォリオを割り振る投資信託。4つの資産とは以下の資産です。
- 国内株式(25%)
- 先進国株式(25%)
- 国内債券(25%)
- 先進国債券(25%)
ポートフォリオは以下の通りとなっています。
通常時であれば債券と株式は補完的な動きをとります。債券が下落する時は株式が上昇し、株式が下落する時は債券が上昇しといった具合です。
これは両者が伝統的に主な投資先となっており機関投資家がどちらかに投資をしているからです。
リスクが高い局面で株を売って債券に逃がしたり、債券を売って株式でリターンを狙ったりするため両者の値動きは補完的になります。
2016年から7年で40%とリターンは高くはないですが、値動きを安定的におさえられているのはポジティブな点です。攻めよりも守りの方が重要ですからね。
青:eMAXIS バランス (4資産均等)
赤:eMAXIS Slim 全世界株式
年 | 1年 | 3年 (年率) |
5年 (年率) |
---|---|---|---|
トータルリターン | 3.86% | 7.21% | 4.74% |
標準偏差 | 9.46% | 8.59% | 8.46% |
シャープレシオ | 0.41 | 0.84 | 0.56 |
過去5年の平均リターン4.74%、標準偏差8.46%から想定される確率毎のリターンは以下となります。
最大でも▲20%程度の損失を想定すれば大丈夫です。
ただ、先ほどもご覧いただいたとおりヘッジファンドの方がリターンが高くリスクが低い優れた結果となっています。
リターン | リスク | |
ヘッジファンド | 8.31% | 6.27% |
eMAIXSバランス(4資産均等) | 4.74% | 8.46% |
ヘッジファンドだけだと不安だという方の分散投資先として検討対象となる投資先と考えます。
3位:eMAXIS Slim 全世界株式 (通称:オルカン)
全世界の株式の時価総額加重平均指数に連動することを目指したインデックス型の投資信託です。
全世界つまりオールカントリーの略称でオルカンとして親しまれています。全世界とはいえ先進国が85%以上をしめ、中でも米国だけで約60%を占めています。
国 | 構成比率 |
米国 | 56.9% |
日本 | 5.4% |
イギリス | 3.7% |
フランス | 3.0% |
カナダ | 2.9% |
スイス | 2.4% |
ドイツ | 2.0% |
ケイマン諸島 | 1.9% |
オーストラリア | 1.9% |
台湾 | 1.5% |
当然、世界の株式市場に連動しているのでリーマンショックやコロナショックのような市場全体が暴落するときには大きく資産が減少してしまいます。
退職金という絶対に失いたくない資金が50%減少してしまったら卒倒してしまいますよね。
また、以下の通り1位のBMキャピタルの属するヘッジファンドの分類と比べて低いリターンとはなっています。
また、全世界株式は2020年代は厳しい可能性が高くなっています。
理由は欧米を中心に発生しているインフレが粘着しているためです。日本でも2023年になりインフレが本格的になっています。
インフレが発生するとインフレを抑え込むために各中央銀行は金利を引き上げます。
金利が上昇すると敢えてリスクをとって株式に投資する妙味が低くなるので株式市場から資金が抜けて株価は下落していきます。
実際、全世界株式の60%を占めるS&P500指数は2022年に20%下落しました。しかし、インフレは2023年現在になっても粘着し、再燃する気配すら見せています。
インフレというのは一度粘着すると何度も波のように押し寄せてきます。前回高いインフレが発生して1970年代はS&P500指数は10年間でリターンはありませんでした。
ここから全世界株式や米国株式に多くの資産を預け入れるのはリスクの高い局面に到来しているのです。
4位:安定運用を目指すダブルブレイン
ダブルブレインはリターン自体はBMキャピタルに対しておとりますが、資産の安全性という観点で優れた投資信託です。
といっても下落体制という点でもコロナショックも無傷で乗り切っているBMキャピタルには劣りますが、、
以下はダブルブレインのリターンです。全世界の株式に対してリターンは劣っていますが、値動きは安定しているのがわかります。
青:ダブルブレイン
赤:eMAXIS全世界株式
緑:eMAXISバランス(4資産均等)
コロナショックで5%しか下落していないのは安心感がありますね。ただ直近は2022年から調子が悪いのが懸念されるところです。
じわじわと基準価額が下落しています。
5位:リスク低減に集中した投資のソムリエ
投資のソムリエは投資におけるリスクを最大限抑えることを目指した投資信託です。投資のソムリエはリスクを4%に抑えることを目指しています。
リスクというのは価格の値動きのことです。
→ 投資におけるリスクとは!?ハイリスクハイリターン投資よりローリスクミドルリターン投資を狙おう!
投資のリスクが4%ということは以下のことを意味します。平均リターンが3%であれば以下の通りとなります。
平均リターン3%から±4%つまり△1%〜+7%の間にリターンが収まる確率が約68%
平均リターンから±4%×2(=±8%)つまり△5%〜+11%の間にリターが収まる確率が約95%
平均リターンから±4%×3(=±12%)つまり△9%〜+15%にリターンが収まる確率が約99.7%
リスクを抑えるために債券のポーションを大きくしているのです。
ただ2022年以降、金利上昇により債券価格が下落している影響が直撃して基準価額は大きく下落して2012年から積み上げてきたリターンを食いつぶそうとしています。
退職金を安全運用する為のおすすめポートフォリオ
では上記の投資信託やファンドを使って退職金を運用するためのポートフォリオを組んでいきたいと思います。
参考にするのはハーバード大学基金(エンダウメント)
ポートフォリオを組む上で参考にするのがハーバード大学基金です。大学の基金も退職金と同じく減らさずに増やすことを目標としているからです。
以下の通りS&P500指数を軽く凌駕するリターンをだしています。
ハーバード大学も下落をできる限り回避しながら年率10%以上のリターンをだしているのです。
運用レポートを元に気になるハーバード大学のポートフォリオは以下となります。ヘッジファンドやPEファンドといわれるようなオルタナティブファンドで約6割を占めています。
→オルタナティブ資産の種類とおすすめ投資先とは?オルタナティブ投資を実践すべき理由とともにわかりやすく解説する!
分類 | |
上場株 | 18.90% |
PEファンド | 23.00% |
ヘッジファンド | 36.40% |
不動産 | 7.10% |
商品(原油、金等) | 2.60% |
債券 | 5.10% |
その他 | 6.90% |
流石にリーマンショックはくらっていますので、より保守的にポートフォリオを組んでいきたいと思います。
攻守を備えた退職金運用向けのポートフォリオ
ハーバード大学のポートフォリオを参考に投資信託で蘇生したポートフォリオが以下となります。
退職金ポートフォリオ | |
BMキャピタル | 50% |
オルカン | 30% |
投資のソムリエ | 20% |
ハーバード大のポートフォリオはPEファンドとヘッジファンドというオルタナティブファンドで60%となっています。
この一番重要なポーションをヘッジファンドであるBMキャピタルに担ってもらいます。
同じくダブルブレインもヘッジファンド型の運用ですが、リターンもリスクもBMキャピタルの方が良いのでまとめてBMキャピタルとします。
そして、上場株と不動産市場は同様な動きをするので、合わせた30%分についてはオルカンを割り当てます。
そして残りの債券や他のポジション分20%については投資のソムリエへの投資とします。
上記のポートフォリオで平均5%-7%程度のリターンを、5%未満のリスクで実現することが可能です。
メモ:ゆうちょ銀行などの退職金キャンペーン(2023)は活用すべき?
退職金を受け取った人がまず考えるのが大手銀行のキャンペーンですね。
当然、退職金が口座に入った瞬間に銀行はまとまった資金がそこにあることを認識しますので、営業のチャンスです。
例えば以下はゆうちょの退職金キャンペーンです。
- 特典①-定期貯金の金利優遇
- 特典②-さらに投資信託のご購入で「郵便局の選べるギフト」プレゼント
特典①
項目 | 内容 |
ご利用いただける方 | 2008 年 1 月 1 日以降に退職金をお受取りになられたお客さま |
預 入 対 象 貯 金 | 定期貯金(1 年)で満期時の取扱いを自動継続扱いとするもの |
対 象 金 額 | 300 万円以上(1 明細) |
預 入 条 件 | ゆうちょ銀行へ新たにお預け入れいただく資金に限ります。 ※1 定期性貯金からの預け替えや定期性貯金の満期金の再預入は対象外です。 ※2 お申込み時に退職金を受け取っている事実とその受取時期を確認できる 資料をご提示いただきます。 (例:退職所得の源泉徴収票、退職金受取口座の預金通帳など) |
内 容 | 定期貯金(1 年)の店頭表示金利に 0.30%(税引後 0.24%)を上乗せいたします。 ※1 初回満期日以降はその時点の店頭表示金利が適用されます。 ※2 満期日までに中途解約した場合は、優遇金利ではなく、一般の定期貯金の 中途解約時の金利が適用されます。 |
特典②
項目 | 内容 |
ご利用いただける方 | キャンペーン期間中に上記「特典①」の対象となられたお客さま (対象の定期貯金をお預け入れいただいた通帳をご提示いただきます) ※1 キャンペーン期間中に 1 回に限り申込みできます。 ※2 キャンペーン期間中に定期貯金を解約された場合は対象外です。 |
対 象 商 品 | 全 9 種類 16 商品(自動積立及びスイッチングを除きます) |
対 象 購 入 額 | 100 万円以上(販売手数料を含みます) ※ 複数の商品を購入し、その合計額が 100 万円以上となる場合も対象となります (同一日の購入に限ります)。 |
内 容 | もれなく「郵便局の選べるギフト」(5 千円相当)をプレゼントいたします。 ※ 2009 年 12 月下旬頃にお客さまあてに発送いたします。 |
どうしても運用をしたくない人は検討しても良いのかもしれませんね。
まとめ
退職金を運用する上で重要なことは資産の安全性を考えながら4%以上のリターンを出すことです。
老後の資産だからこそ慎重に運用する必要があるのです。
ハーバード大学の年金基金を参考にしてオルタナティブファンドを活用しながら下落に備えるポートフォリオを組むことを推奨します。