高配当投資家にとって2023年現在、目を疑うような大企業が配当利回り上位に並んでいます。
2023年1月29日時点の配当利回り上位をみると以下の通り海運株が上位に集中していました。現在2024年時点では上位からは退いています。
1位:商船三井(17.37%) →2023年12月時点では4.5%
2位:日本郵船(16.77%) →2023年12月時点では3.2%
3位:ユナイテッド海運(8.93%) → 2023年12月時点では3.5%
4位:乾汽船(8.80%)→2023年12月時点では1.1%
6位:川崎汽船(7.49%)→2023年12月時点では3.7%
そして、これらの銘柄は株価も2021年から2022年にかけて軒並み急上昇しています。
川崎汽船は一時2019年の底から10倍を達成しています。
青:日本郵船
赤:商船三井
緑:ユナイテッド海運
黄:乾汽船
紫:川崎汽船
ここまで海運株全体が調子がよいということは海運株全体に追い風が吹いていたことが容易に想像がつきます。
本日は以下の点に要点を絞ってお伝えしていきたいと思います。
✔︎海運株がなぜ上昇したのか?
✔︎配当利回りが高いのは何故か?
✔︎今後の見通しと現在投資する価値があるのか?
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参考サイト
Finboardは、
海運株全体の株価が上昇している要因はシンプルに業績が良いから
株価というのは「EPS×PER」で簡単に算出することができます。
PERというのは、その時の金利水準や人々の投機熱によって上下するので企業が操ることはできません。
しかし、EPSは1株あたり純利益なので企業が純利益を上昇させれば引き上げることができます。
以下は各社の純利益の推移です。日本郵船、商船三井、川崎汽船と乾汽船、NSユナイテッドは規模が違うので別のグラフにしています。
日本郵船 | 商船三井 | 川崎汽船 | 乾汽船 | ユナイテッド海運 | |
Mar-07 | 65,037 | 120,940 | 51,514 | 1,383 | 8,857 |
Mar-08 | 114,139 | 190,321 | 83,011 | 807 | 16,074 |
Mar-09 | 56,151 | 126,987 | 32,420 | 179 | 6,689 |
Mar-10 | -17,447 | 12,722 | -68,721 | -22 | 1,215 |
Mar-11 | 78,535 | 58,277 | 30,603 | -61 | 3,236 |
Mar-12 | -72,820 | -26,009 | -41,351 | 395 | -914 |
Mar-13 | 18,896 | -178,846 | 10,669 | 286 | -15,505 |
Mar-14 | 33,049 | 57,393 | 16,642 | 156 | 10,778 |
Mar-15 | 47,591 | 42,356 | 26,818 | 9,246 | 8,626 |
Mar-16 | 18,238 | -170,447 | -51,499 | -14,234 | 4,110 |
Mar-17 | -265,744 | 5,257 | -139,478 | -880 | 3,322 |
Mar-18 | 20,167 | -47,380 | 10,384 | 1,820 | 6,613 |
Mar-19 | -44,501 | 26,875 | -111,188 | 639 | 9,343 |
Mar-20 | 31,129 | 32,623 | 5,269 | 80 | 5,947 |
Mar-21 | 139,228 | 90,052 | 108,695 | -1,186 | 6,131 |
Mar-22 | 1,009,105 | 708,819 | 642,424 | 11,848 | 23,582 |
Mar-23 | 1,030,000 | 790,000 | 700,000 | 9,303 | 26,000 |
Mar-24 | 220,000 | 220,000 | 105,000 | 1,081 | 13,900 |
純利益が上昇しているので当然、1株あたりEPSも増加しています。結果として株価は上昇しているというわけですね。
ただ、利益の増加に比して2021年から2022年は株価は上昇しませんでした。
これは次の項目で説明するとおり海運市況の状況から今後利益が大きく下落することが織り込まれていたからだと考えられます。
実際、2024年3月期は大幅な減益がみこまれており、この水準の利益を前提として値付けされていたみたいですね。
海運株は市況で動く!業績の急上昇はコンテナ船市況の急騰が理由
海運株の業績が上昇した理由は以下の一枚の図で説明がつきます。
以下はコンテナ船の運賃市況の推移です。
コンテナ船の市況は2020年から急騰したあとに2021年後半から暴落しています。
パンデミック後、以下の要因によって海運市況は急騰しました。
- 労働市場の逼迫
- 生産ラインの停滞によるコンテナ不足
- パンデミックによる港湾の混乱
- パンデミックからの回復期の需要の急増
しかし、2022年にはいってからは最初の3つが回復し、更に4つ目も徐々に不況の足音が聞こえてきており市況が急落しているのです。
契約期間などの関係で市況の悪化から実際に利益が凹むまでにはラグがあり2024年3月期から2025年3月期の利益が今後の基調的な収益になるものと考えられます。
稼いだ利益を潤沢に配当金に拠出
海運企業は以下の通り2022年3月期から配当金を急激に増額しています。株価の上昇率よりも高いので配当利回りが急激に上昇しているのです。
ただ、純利益が大幅に縮小していることもあり2024年3月期は配当金が大きく減少しています。
日本郵船 | 商船三井 | 川崎汽船 | 乾汽船 | NSユナイテッド海運 | |
Mar-13 | 13.3 | 0 | 8.33 | 18 | 0 |
Mar-14 | 16.6 | 16.6 | 15 | 18 | 90 |
Mar-15 | 23.3 | 23.3 | 28.3 | 18 | 90 |
Mar-16 | 20 | 16.6 | 16.6 | 18 | 40 |
Mar-17 | 0 | 6.67 | 0 | 18 | 40 |
Mar-18 | 10 | 6.67 | 0 | 24 | 85 |
Mar-19 | 6.67 | 15 | 0 | 7.72 | 115 |
Mar-20 | 13.3 | 21.6 | 0 | 6 | 80 |
Mar-21 | 66.6 | 50 | 0 | 6 | 80 |
Mar-22 | 483 | 400 | 200 | 224 | 285 |
Mar-23 | 510 | 550 | 200 | 173 | 340 |
Mar-24 | 130 | 190 | 200 | 13 | 180 |
今後は配当金目当ての投資家の流入は今までのようには期待しづらく、純粋に利益に連動した動きとなることが想定されます。
海運株の今後の見通しは暗い?急落すると考える理由を解説!
海運株の今後の見通しは誰の目からみても芳しくありません。理由は既にコンテナ船の市況が暴落しているからです。
先ほどの図をもう一度ご覧ください。中国向けに関しては既に2020年以前の水準に戻ってきています。
現在、高い市況の時に契約した分が収益に貢献しています。しかし、市況が低くなったあとに契約した分が収益の大半をしめるようになると利益は2020年以前の状態に逆戻りします。
まだ、2024年3月期の収益は海運市況が高い時の契約残などがあり高い水準を保っていますが、2025年3月期は2020年以前の利益水準に戻っていきます。
特に2024年に想定されている景気後退局面では海運市況も暴落しているので厳しい展開となりますね。
まとめ
今回のまとめは以下となります。
✔︎海運株が上昇したのは海運市況の急騰を背景として純利益が急上昇したから
✔︎配当金の上昇が株価よりも急激であるため配当利回りが高くなっている
✔︎海運市況は既に暴落しており株価も配当金も現在の水準を維持するのは不可能
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