オルタナティブ投資というのは、そのまま直訳すると代替的投資ということになります。
オルタナティブ投資は1990年代から興隆し始めた投資手法で、比較的新しい先進的な投資手法となります。
オルタナティブ投資が必要となる背景には、それ以前の様々な理論が影響してくることになります。
では、そもそもなぜオルタナティブ投資が必要になったかという点について歴史的な経緯に焦点を当てながら掘り下げてみたいと思います。
オルタナティブ投資以前からの伝統的資産運用とは?
オルタナティブ投資に対比する概念として伝統的資産運用があります。
この伝統的資産運用とは株式、債券、為替など伝統的に取引されてきた金融商品に投資をして資産運用をすることを指します。
最初は伝統的資産運用で様々な試みがなされ、その延長線上に浮上してきたのがオルタナティブ投資なのです。
伝統的資産運用の世界でも高名な学者たちから様々な理論が登場しましたが、
つまるところ目指すところは一つで、いかにリスクを排除してリターンを得るかということです。
ここで一つ確認しておきたいのが、リスクとは価格の変動幅のことです。
価格が上下に激しく揺れ動くような資産には怖くて投資したくないですよね。
リスクが低くてリターンが高いというのは、以下の資産(青)のように右肩上がりで上昇するような資産のことをさします。
同じリターンでも資産(青)のほうが安心して投資できます。
マーコウィッツのポートフォリオ理論とは?
伝統的資産運用の代表例としてポートフォリオ理論というのがあります
1990年にノーベル経済学賞を受賞したハリー・マーコビッツは投資や証券の思考を理論的に表現して展開したモダンポートフォリオ理論の始祖とされています。
マーコビッツは1940年後半にシカゴ大学の学生として卒論で株式市場のテーマに取り掛かりました。
しかし、当時の世界大恐慌からまだ抜け切れていない雰囲気としては株式市場を学術研究の対象として取り上げること自体が邪道とされていました。
なんだかバブル崩壊をいまだに払拭できていない日本の現在と似ていますね。
当時は多くに人々はインサイダー情報を活用しないと、株式市場において利益を上げることが不可能であると信じていました。
こうした状況下マーコビッツが提唱した理論は学生ながら画期的なもので、リターンだけでなくリスクにも配慮する理論を提唱しました。
同じ株式投資でも、単一銘柄に投資するのと市場全体に投資することの差に着目しました。
前者では銘柄選択を間違わなければ市場平均に対してプラスのリターンを確保することができますが、銘柄選択を間違えればたちどころに市場平均以下の収益しか確保できません。
一方、市場全体に投資を行えば経済全体の成長に投資できるが超過リターンのチャンスを失うことになります。
そこでマーコビッツはマーコビッツはリターンだけでなく、リスクにも配慮する必要があるのではないかと考えるとともに、
市場の動きだけでなくスキルからも一定の成果を獲得できるという考え方を提唱しました。
このスキルからもたらされる一定の成果が後にαとして投資の世界で有名になります。
マーコウィッツは長年の研究の末に株式投資をする際に、銘柄選択を行うのではなく分散された効率的なポートフォリオを構築することによって、
リスクを高めることなく期待リターンを向上できることを投資家に示しました。
つまり効率的なポートフォリオである日経平均やダウ平均などの指数に投資することによって低いリスクで高いリターンを期待できるということをマーコビッツは示したのです。
ただ当時は投資信託という器を利用するにしても販売手数料が高く手数料を取り返してリターンを得るには、どのみち銘柄選択による超過リターンを狙うしかありませんでした。
更にポートフォリオを構築するのに必要な計算をすること自体が至難の業であったため実証ができませんでした。
しかし時間がたつについれて手数料は10分の1まで引き下がり、
コンピューターの発達によって効率的なポートフォリオを組めるようになったため1980年以降になって漸く机上の理論から実践の理論へと昇華していきました。
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ケインズの投資理論とは?
ケインズというと大学の経済学の事業では絶対に出てくるワードです。
現在の経済学はケインズを発端としているといっても過言ではない偉人です。
ケインズも投資理論について言及しております。
彼の理論の特徴は「金利」にあります。
現金とリスク性資産の選択の際して投資家は現状の金利と先々の金利の予想に基づいて行動するというものです。
金利が上昇すると予想されるときには現金を保有して預金金利を受け取るという行動をとり、
逆に金利が低下すると予想する場合は金利収益が低くなるので株式や債券を保有する行動に走るというものです。
預金金利が低下し現金を保有する魅力がなくなれば多少リスクをとってもリターンが期待できる株式等の魅力が高まります。
それ故に世界中が中央銀行の金融政策に注目をあつめています。
ただケインズの理論には投資対象の分散という概念は存在せず、金利予測に応じて現金を保有するか、株や債権といったリスク性資産を保有するかに言及しているの留まっています。
一方、マコービッツの理論では、あくまでリスク性資産についてのみ言及しており、現金との兼ね合いについては考えられていません。
つまり株式や債券、現金、あるいは商品など、リスク・リターンの異なる資産を組み合わせてポートフォリオを構築するというところまでに至っておりませんでした。
システミックリスクとβの発見
マコービッツとケインズを経ても実務的に最適ポートフォリオをどう計算するのかについては未解決のままでした。
この問題を解決する為にマコービッツが1960年に招いたのがウイリアム・シャープです。シャープレシオのシャープさんです。
彼が開発したリターン分析は現在でもばりばり最前線で米国の年金運用を中心にファンド評価の分析手法として用いられています。
シャープは株式市場の変動を株式市場全体の要因んであるシステミックリスクと、それ以外の非システミックリスクに大別しました。
そしてシステミックリスクは分散効果によって消し去ることはできないととらえ、このリスクはマーケットに参入していることから発生しているものであるとしました。
ポートフォリオからリスク性資産そのものを排除しない限り消し去ることはできないことを立証しました。
システミックリスクは川の流れのようなもので良い銘柄を選んでも、
市場である川自体が逆流していればなかなか逆行高することは難しくなります。
この市場由来のリスクをβといいます。
例えばTOPIXのようなインデックスのβを1.0と定義し、ある銘柄のβが2.0とするなら、この銘柄はTOPIXが10%上昇した場合20%上昇し、10%減少した場合20%減少することをいみします。
またβが0.5であった場合。TOPIXが10%上昇した場合5%上昇し、10%減少した場合5%減少することを意味します。
つまりβ値の低い銘柄ほどローリスクであり、β値の高い銘柄ほどハイリスクであるということになります。
βの概念が市場に受け入れられると低β株は高β株よりも選好され株価が上昇し、その結果低β株の期待リターンは低下する一方、高β株の株価は下落し期待リターンが上昇します。
これがリスク・プレミアムとよばれるものでリスクに応じて投資家が期待する収益が高くなる現象がおこるのです。
こうして市場はリスクを勘案した均衡点に向かって収束していくことになるのです。
その結果としてβが1つまりTOPIXなどの市場平均が最も効率的なポートフォリオであるという結論になっていきます。
またシャープは市場に由来しない非システミックリスクについては適切な分散投資によって消し去ることができ、敢えてとる必要がないと提唱しています。
つまり普通に株式投資を行うのであれば、目をつむって市場平均連動型ETFを買っておけよということです。
オルタナティブ投資の必要性
ここで結局システミックリスクを伝統的な資産運用では消し去ることが出来ません。このシステミックリスクをなんとかして消し去ろうというのがオルタナティブ投資なのです。
次回、オルタナティブ投資の意義と種類についてお伝えしていきたいと思います。