新興国投資に興味がある方は、VWOを購入することを検討する人も多いのではないでしょうか?
評判がなかなか良い商品となっていますが、実際のところはどうなのでしょう?
結論としては、VWOを購入するメリット・デメリットで分けると以下のようになります。
関連
----メリット----
- 手軽に新興国全体に投資できる
- 手数料が年率0.08%と低い
----デメリット----
- リーマンショックなどの危機発生時に弱い動きをする
- 値動きが荒く年20%以上のマイナスも覚悟しなければいけない
それではじっくりそれぞれ解説していきたいと思います。尚、他のETF(バンガードシリーズ含む)は以下の記事でまとめています。
VWO(バンガード・FTSE・エマージング・マーケッツETF)はどのようなETFなのか?
VWOは正式名称は、バンガード・エマージング・マーケッツETFです。
VWOのVはバンガード(Vanguard)のVということですね。
VWOが連動を目指すFTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)・インデックスとは?
そもそもETFというのは対象となる指数に連動するよう設計されています。
VWOはFTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)・インデックスに連動するよう設計されています。
The FTSE Emerging Markets All Cap China A Inclusion Index is a market-capitalisation weighted index representing the performance of large, mid and small cap stocks in Emerging markets. The index is part of the FTSE China A Inclusion Indexes which contain FTSE China A All Cap Index securities adjusted for the aggregate approved QFII and RQFII quotas available to international investors.
参照:FTSE Russell
若やすく日本語訳したものが以下となります。
FTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)・インデックスの日本語説明
FTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)・インデックスは時価総額加重指数です。新興市場の大型、中型、小型株のパフォーマンスを表しています。この指数は、中国国内投資家向けのA株も含んでいます。但し、A株の時価総額は海外投資家が投資可能な承認済みQFIIおよびRQFII割当量の合計で調整しています。
大きな特徴としては3点ですね。
1つ目の特徴は時価総額加重平均指数であるということです。これは時価総額の大きさに応じて銘柄を多く指数に組み入れるというものです。
時価総額が1兆円の企業は、時価総額が1000億円の10倍組み入れられているということですね。TOPIXやS&P500指数が時価総額加重平均指数の代表格です。
2つ目の特徴は大型株だけでなく中小型株も含んでいるということです。これにより新興国株式市場の殆どをカバーできていることになります。
3つ目の特徴は中国の国内投資家しか投資できない中国A株も組み入れているということです。ただし全額を考慮しているわけでなくQFIIおよびRQFII割当量の合計を組み入れているとしています。
Qualified Foreign Institutional Investorsの略称で、適格海外機関投資家のこと。国内市場で海外投資家が取引することを制限している国において、例外的にその国の通貨で自由に取引することが認められている機関投資家。中国では中国証券監督管理委員会(CSRC)の認定を受け、かつ中国国家外貨管理局(SAFE)から投資限度額の認可を取得した海外の機関投資家が、投資限度枠内で外貨を人民元に両替し、中国人民元建ての金融商品(上海A株、深センA株や債券)等へ投資を行うことができる。
中国本土の人民元建て証券市場に対する外国人の投資制度は、2002年末にQFIIが導入された後、オフショアで調達した人民元で本土の株式・債券へ投資を行うことができる「RQFII(人民元適格海外機関投資家)」制度が2011年末に導入された。2014年11月以降は、「上海・香港ストック・コネクト」の開始に伴い、香港経由で海外の個人投資家が上海A株を直接購入することが可能になった。
参照:野村證券
つまり、本来中国国内投資家しか投資できなかった銘柄を、資格を持った海外投資家も一定の限度枠の中で中国A株を取引できるということですね。
この海外投資家が取引できる分を時価総額としてカウントして組み入れているということです。
FTSEエマージング・インデックスとの違いとは?
FTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)・インデックスと類似の「FTSEエマージング・インデックス」との違いを解説します。
FTSEエマージング・インデックスは大型株と中型株のみで小型株を含みません。また中国A株にも投資しません。
そのためFTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)・インデックスの構成銘柄数が約5200銘柄に対して、FTSEエマージング・インデックスは約1800銘柄となっています。
よりFTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)・インデックスの方がカバーしている領域が広いという特徴があります。
VWOはどのようにインデックスに連動させているのか?インデックス・サンプリング法
VWOが連動を目指しているFTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)・インデックスの構成銘柄は5,200銘柄と非常に膨大になります。
全ての銘柄を取引きすることは現実的に難しいため、VWOはインデックス・サンプリング法という方法を用いています。
連動対象指数(のちほど説明します)の、PER・ROE・PBR等の指標を出来うる限り合わせるように銘柄を抽出する方法を用いて連動を目指したポートフォリオを組成しています。
実際にVWOとベンチマークインデックスの2023年8月時点の指標は以下の通りとなっています。
VWO | ベンチマーク | |
利益成長率 | 14.1% | 14.1% |
PER | 12.7倍 | 12.7倍 |
PBR | 2.0倍 | 2.0倍 |
ROE | 15.1% | 15.1% |
VWOが投資している国の割合~高度成長が終わった国の割合が非常に高い~
VWOが連動を目指しているFTSEエマージング・マーケッツ・オールキャップ(含む中国A株)・インデックスの投資している国の比率は以下となっています。
最初に分析した2020年8月時点からの推移と共にご覧ください。インド株が躍進した分、中国株の比率が減っています。さらにウクライナ危機を引き落としたロシア株が除外されていますね。
市場 | 2023年8月時点 | 2020年8月時点 |
中国 | 33.1% | 45.20% |
台湾 | 17.50% | 15.60% |
インド | 17.80% | 9.70% |
ブラジル | 6.50% | 5.60% |
南アフリカ | 3.60% | 3.90% |
ロシア | - | 2.90% |
Saudi Arabia | 4.30% | 2.90% |
タイ | 2.70% | 2.50% |
マレーシア | 1.80% | 2.40% |
メキシコ | 3.10% | 1.90% |
インドネシア | 2.20% | 1.60% |
フィリピン | 0.80% | 0.90% |
カタール | 1.00% | 0.90% |
Kuwait | 0.90% | 0.70% |
チリ | 0.70% | 0.60% |
アラブ首長国連邦 | 1.60% | 0.60% |
トルコ | 1.00% | 0.50% |
ギリシャ | 0.50% | 0.30% |
コロンビア | 0.20% | 0.30% |
ハンガリー | 0.20% | 0.20% |
エジプト | 0.10% | 0.20% |
チェコ共和国 | 0.20% | 0.10% |
VWOの構成銘柄はどうなの?
国別の比率ではなく、VWOの2023年8月時点の組み入れ上位銘柄は以下のようになっております。
以下赤枠の企業は中国企業なのですが、上位10銘柄のなかで4銘柄が中国で、3銘柄がインドという構成になっています。
銘柄 | 国名 | 構成比率 |
---|---|---|
Taiwan Semiconductor Manufacturing Co. Ltd. | 台湾 | 4.80 % |
Tencent Holdings Ltd. | 中国 | 3.68 % |
Alibaba Group Holding Ltd. | 中国 | 2.83 % |
Reliance Industries Ltd. | インド | 1.34 % |
Meituan Dianping Class B | 中国 | 1.31 % |
Taiwan Semiconductor Manufacturing Co. Ltd. ADR | 台湾 | 0.81 % |
HDFC Bank Ltd. | インド | 0.76 % |
Infosys Ltd. | インド | 0.74 % |
Vale SA | ブラジル | 0.73 % |
China Construction Bank Corp. Class H | 中国 | 0.70 % |
1位のTSMCは台湾の半導体の製造企業です。圧倒的に世界トップの技術をもっており他の追随を許していません。
もはやTSMCを巡って米中の対立が激化しているといってもいいほどの超優良企業です。
ちなみに3年前に分析した時の構成上位銘柄は以下となります。中国が6銘柄も占めており圧倒していますね。当時から随分と構成上位銘柄が入れ替わっています。
インドの台頭を感じますね。
銘柄 | 国名 | 構成比 |
Alibaba Group Holding Ltd. ADR | 中国 | 7.79% |
Tencent Holdings Ltd. | 中国 | 6.04% |
Taiwan Semiconductor Manufacturing Co. Ltd. | 台湾 | 3.63% |
Taiwan Semiconductor Manufacturing Co. Ltd. ADR | 台湾 | 1.96% |
Meituan Dianping Class B | 中国 | 1.82% |
Reliance Industries Ltd. | インド | 1.36% |
Naspers Ltd. | 南アフリカ | 1.19% |
JD.com Inc. ADR | 中国 | 1.03% |
China Construction Bank Corp. | 中国 | 1.00% |
Ping An Insurance Group Co. of China Ltd. | 中国 | 0.89% |
2020年8月時点
VWOの手数料
VWOの手数料は非常に低く年率0.08%となっています。ちなみに3年前に分析した時は年率0.14%だったので大幅に低くなっています。
米国のETFの平均の25%の水準と非常に低い手数料となっています。
日本の投資信託の手数料が1%~2%ということを考えると非常に良心的な手数料形態です。
日本で同じような新興国に投資を行っているeMaxisシリーズでも年率0.648%なので非常に低い手数料であることが分かります。
1年間では僅かな差ですが、長期投資を行えば大きな差になってきます。
このようなインデックス連動型のETFではいかに手数料が低く抑えられているかという点は非常に重要になってきます。
VWOの長期成績をチャートとデータから確認する
肝心のVWOの今までの成績ですが、全世界に投資をするVTとの比較チャートをご覧ください。
2009年初からのデータで比較したものは以下です。全世界株式に完敗していますね。リターンは低いのにリスクは高いという状態になっています。
年率リターン | 標準偏差 リスク |
Best Year | Worst Year | |
VWO | 6.87% | 19.63% | 76.28% | ▲18.73% |
VT | 10.32% | 16.26% | 32.65% | ▲18.01% |
VWOとベンチマークの比較は以下となっています。
YTD | 1年 | 3年年率 | 5年年率 | 10年年率 | 設定来年率 03/04/2005 |
|
---|---|---|---|---|---|---|
VWO (Market price) | 11.22% | 7.96% | 2.99% | 2.58% | 3.79% | 5.60% |
ベンチマーク | 10.30% | 8.15% | 2.75% | 2.76% | 3.75% | 5.70 |
ここ10年間の年平均で3.79%となっています。特にこの10年間は中国株が軟調だったこともあり低いリターンになってしまっています。
投資する時期が悪ければ、報われない期間が長いこと続く可能性があるというのは大きなデメリットといえるでしょう。
VWOの分配金の推移と分配利回り
以下はVWOの配当履歴です。四半期に一回分配金が拠出されます。直近4回、つまり年間の分配金は$1.4程度ですね。
Type | $/Share | Payable date |
---|---|---|
Dividend | $0.226700 | 06/23/2023 |
Dividend | $0.028100 | 03/23/2023 |
Dividend | $0.634700 | 12/22/2022 |
Dividend | $0.529400 | 09/22/2022 |
Dividend | $0.305700 | 06/24/2022 |
Dividend | $0.133900 | 03/24/2022 |
現在のVWOの価格が$40程度なので分配金利回りは3.5%程度となっています。高配当ETFではないのに意外に高いですね。
価格が下落しているので分配利回りが高くなっていることが想定されます。
狙い目の新興国とは?
VWOはあくまで全ての新興国に分散投資をしているETFです。ただ、せっかく高いリターンを狙うのであれば魅力的な新興国株式に集中投資を行なった方が期待が持てます。
その新興国とはずばり中国です。
ここまでの説明を見てきた方なら困惑した方が多いかと思います。この10年間、中国株が低迷したから新興国株全体のリターンが悪かったと先ほど書いたばかりですからね。
しかし、相場の世界には「人の行く裏に道あり、花の山」という格言があります。
これは株式市場で利益を得るためには他人とは逆の行動をとらないといけないという意味の格言です。
思えば、リーマンショックの時に株式投資を清水の舞台から飛び降りる覚悟でおこなったり、コロナショックで突っ込んだ人が現在富裕層になっています。
実力に対して明らかに不当に株価が低く評価されている時こそ、投資を行う絶好の機会なのです。それが現在は中国だということです。
以下は日本と米国の1人あたりGDPの比較です。中国は今まさに日本がバブル相場を迎えた時と同じ水準の経済状態となっています。
この水準になると徐々に生活に余裕がでてきて、国民が株式を購入できるようになるので株価が本格的に上昇をしていきます。
バブルというのは新興国が成長をする過程で、不動産で発生した後に株式で発生します。
日本は不動産のバブルが1960年代〜1970年代にかけて発生して、株式バブルが1980年代に発生しました。
中国は不動産バブルが2000年代〜2010年代にかけて発生しました。2020年からはいよいよ株式市場が眠れる龍が目をさまして急上昇する局面にかかっています。
中国株は経済が成長しているにも関わらず横ばいで推移したため、世界の株式市場に比して大幅に割安な水準で放置されています。
中国株式の魅力と投資先については以下で筆者が実際に投資しているオリエントマネジメントの記事で説明していますので参考にしていただければと思います。
【オリエントマネジメント】実力に比して割安度が高まる中国株式に投資する評判のヘッジファンド「ORIENT MANAGEMENT」を紹介!
今後の見通しとまとめ
VWOは新興国の時価総額比率順に銘柄を組み込んでいるETFです。
過去10年間、新興国株式の雄である中国株式が軟調に推移したことで先進国株に大きく劣後する成績となってしまっていました。
しかし、中国の経済は拡大を続けており、企業も成長しており明らかに割安度が増してきています。
今後は現在割高になっている米国株を中心とする先進国株式をアウトパフォームすることが期待できます。
せっかく投資をするのであれば、新興国全体ではなく今後最もリターンが期待できる中国株に集中投資をするという選択肢を検討するのも妙手かと思います。