最近まで知らなかったのですが、米国株が上昇していく中で「TECL」「TECS」というレバレッジの効く商品が流行しているようですね。
日本でも楽天日本株4.3倍ブルや楽天トリプルベアなどのレバレッジ投信が流行っているので世界的な潮流としてレバレッジが人気を博しています。
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本日は米国のレバレッジ型ETFであるTECLとTECSについて紐解いていきたいと思います。
TECLとTECSとはどのような商品か?
TECLと呼ばれていますがこれは米国のティッカーシンボル、銘柄コードです。
本当の商品名は「デイリー テクノロジー株ブル3倍ETF&デイリー テクノロジー株ベア3倍ETF」です。
米国のレバレッジETFです。
凄まじく儲かりそうな名前ですね。楽天日本株ブル型4.3倍を思い出します。
TECLとTECSがありまして、TECLはデイリー テクノロジー株ブル3倍ETFです。
上昇相場を目指すということですね。TECSはベアなので下落相場で利益を狙うETFです。
株式市場では購入することをLongといい、空売りすることをShortといいます。
TECLのLはLongでTECSのSはShortと覚えておけば簡単ですね。
The Direxion Daily Technology Bull (TECL) and Bear (TECS) 3X Shares seek daily investment results, before fees and expenses, of 300%, or 300% of the inverse (or opposite), of the performance of the Technology Select Sector Index. There is no guarantee the funds will meet their stated investment objectives.
出所:https://www.direxion.com/product/daily-technology-bull-bear-3x-etfs
日本語訳は以下の通りです。
Direxion Daily Technology Bull (TECL) and Bear (TECS) 3X Sharesは、日々の投資成果を、手数料と経費の支払い前に、テクノロジー・セレクト・セクター・インデックスのパフォーマンスの300%、またはその逆(または逆)の300%を求めています。
これらのファンドが記載された投資目的を満たすことを保証するものではありません。
テクノロジーセクターに集中投資して300%のリターンを狙うということですね。
次で見たいと思いますが、米アップルなどが存在するセクターを指しています。’
純資産総額は15億8000万米ドル (2022/06/25)となっています。
1ドル135円で考えると約2,100億円と非常に大きな規模感ですね。
投資目的:
DDirexionデイリーテクノロジー株ブル3 倍ETF & Direxionデイリー テクノロジー株ベア3倍 ETFは、手数料および費用の控除前の段階で、ファンドの日次基準価額の値動きがテクノロジー・セレクト・セクター・ インデックスの3倍のパフォーマンス、また は3倍のパフォーマンスの反対となる投資成 果を目指します。
ファンドがその投資目的を達成することを 保証するものではありません。 これらのレバレッジETFはベンチマークとな る株価指数に対して、単日ベースでプラス 300%またはマイナス300%の投資成果を実 現することを目指して運用されます。いず れのファンドもベンチマークとなる株価指 数に対して、複数日ベースでプラス300%ま たはマイナス300%の投資成果を実現するこ とを目指して運用されているわけではあり ません。
対象とする指数:
テクノロジー・セレクト・セクター・インデックス(IXTTR)は、S&P Dow Jones Indicesが提供するインデックスで、次の産 業を含むテクノロジー・セクターに属する米国内の企業で構成されています:コンピ ュータ・周辺機器、ソフトウェア、各種電 気通信サービス、通信機器、半導体・半導 体製造装置、インターネット・ソフトウェ ア・サービス、情報技術サービス、電子装置・機器・部品、無線通信サービス、ならびに事務用電子機器。当該指数に直接投資 することはできません。
S&P Dow Jones Indicesが提供する指数、「テクノロジー・セレクト・セクター・インデックス(IXTTR)」を対象にしているとのこと。
右肩上がりに上昇してきましたが直近2021年末から一転して下落に転じていますね。
TECLのポートフォリオ・構成銘柄
それぞれの銘柄を見ていきましょう。
TECLを購入したら、それぞれの銘柄の動きを毎日緊張しながら見なければいけません(リスク許容度によりますが・・・笑)
まずはセクターウェイトです。やはりソフトウェアが最も大きな比率。
INDEX SECTOR WEIGHTINGS % | |
---|---|
Software | 32.94 |
Hardware, Storage & Peripherals | 24.61 |
IT Services | 20.88 |
Semiconductors & Equipment | 16.01 |
Communications Equipment | 3.26 |
Electronic Equipment & Components | 2.30 |
参照:Fact Sheet
続いて具体的な銘柄です。
以下はトップ10です。マイクロソフト、アップルで40%を超えます。
INDEX TOP TEN HOLDINGS %
Microsoft | 21.92 |
Apple | 21.11 |
Visa Incorporation | 4.63 |
Mastercard | 3.71 |
Intel | 3.6 |
Nvidia | 3.32 |
Adobe | 2.98 |
Paypal | 2.91 |
Cisco | 2.81 |
Salesforce.com | 2.4 |
TOTAL | 69.39 |
追随して比較的安定株のVISA、Mastercardが続きます。
今後半導体分野で覇権をとると言われているNvidia、決済サービスのペイパル、最近SP500入りしたセールスフォースなど。人気銘柄が並びます。
この構成銘柄は・・・株式市場のセンチメントでパフォーマンスは大きく左右しそうです。
例えば2020年3月のコロナショックで大暴落した後に早急に回復した株式市場の中でTECLは爆益を叩き出しました。
コロナショックの底の2020年3月から2021年末までの間にTECLは10倍になりました。テンバガー です。
しかし2021年末から大きな下落に転じており2022年6月末までに最高値から3分の1に下落しています。
一方、ベア型のTECSの値動きについても見ていきましょう。
コロナショックの底の1400ドルから30ドル未満まで50分の1になったあと現在2倍になっています。
右肩あがりの相場におけるベア型ファンドの危険性を痛感しますね。
レバレッジ型ETFで気をつけることとは?レバレッジがかかるのはあくまで日次リターン!
指数の動きが横ばいでも損のケースがあります。注意すべきなのはTECLやTECSのレバレッジは対象指数の日次リターンに対してかかるということです。
わかりやすく実際の例を何個か用いて確認します。以下はそれぞれの指数の動きに対してのTECLの動きです。
IXTTRが1日目、2日目ともに10%上昇した場合:
指数の上昇率は(1.1×1.1)-1×1=+21%
TECL3倍の場合は(1.3×1.3)-1×100=+69%
2日でダブルバガーしてしまいそう・・・という水準ですね。
IXTTRが1日目、2日目ともに10%下落した場合:
指数の下落率は(0.9×0.9)-1×100=-19%
TECL3倍の場合は(0.7×0.7)-1×100=-51%
IXTTRが1日目10%下落、2日目に10%上昇した場合:
指数の下落率は(0.9×1.1)-1×100=-1%
TECL3倍の場合は(0.7×1.3)-1×100=-9%
更にわかりやすくお伝えします。
例えば5日間上下した結果、対象指数のIXTTRが元どおりになった場合を考えます。
0日目 | 1日 | 2日 | 3日 | 4日 | 5日 | |
IXTTR | 10,000 | 11,000 | 9,900 | 10,890 | 9,801 | 10,000 |
前日比騰落率 | - | 10.00% | -10.00% | 10.00% | -10.00% | 2.00% |
投資時点からの上昇率 | - | 10.00% | -1.00% | 8.90% | -2.00% | 0.00% |
TECL | 10,000 | 13,000 | 9,100 | 11,830 | 8,281 | 8,785 |
前日比当落率 | - | 30% | -30% | 30% | -30% | 6% |
投資時点からの上昇率 | - | 30.00% | -9.00% | 18.30% | -17.20% | -12.10% |
市場が横ばいで推移するとレバレッジETFは下落することを念頭に置いておきましょう。上記はベアの場合も同様の結果となります。
要は明確な方向感がある時だけ短期的に投資をするのが適切だということですね。
購入方法と手数料(楽天証券でも購入可能)
TECL TECSはネット証券で購入可能です。
経費率は1.08%となっています。
(経費率:投資信託やETFを運用するために必要な費用が、純資産総額に対してどのぐらいの割合かを表したもの)
TECLの今後の見通し
重要なのは今後の見通しです。
テクノロジー企業は2020から業績の拡大を伴いながら株価は急上昇していきました。
更に米国の中央銀行が行なった大規模な金融緩和で勢いがつき、テクノロジー銘柄は実態をはるかに超える高値圏まで上昇していきました。
しかし、2021年末から状況は逆転してテクノロジー株は下落トレンドに突入しています。
2020年から2021年に成長を先取りした結果、2022年以降の成長率が鈍化しているからです。
更にFRBは大規模金融緩和によって発生したインフレを抑制するために、今度は急速な引き締めを実行しています。
つまり2021年中盤までの逆転現象が発生しているのです。
そして、上記の条件はしばらく継続することが見込まれています。インフレもおさまる気配が見えませんしね。
そのためTECLは短期的、中期的には厳しい値動きが期待されます。
しかし、インフレがおさまり金融引き締めが終われば底打ちして上昇に転じることが見込まれます。
ただ、この時期を読むのは難しいですし、入るタイミングを間違えれば大怪我します。
筆者としてはどのような市場環境でもリターンを狙うファンドの方が安心して長期的に資産を形成するには適していると見込んでいます。
以下で安定運用に向いているファンドについてまとめていますので参考にして見てください。
【2022年・国内和製優良ヘッジファンド】おすすめ投資先ランキング〜リスクを抑え安全・着実に資産を増やせる運用先(投資信託などアクティブファンド含む)を紹介。
まとめ
レバレッジ型ETFは短期売買を主体にしてください。
そこには長期積み立て、複利などの概念はなく、短期的に株式市場が上昇するか、下落するのかにBETして高いリターンを高いリスクをとって獲得しにいくものです。
基本的には、相当な上級者でないと買うべき商品ではないことは理解しておきましょう。