金融のグローバル化によって日本でも様々な世界の株式に投資する投信が販売されています。
当ブログでも以下のような同様の投信を分析してきました。
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今回、紹介する投信はニッセイグローバル好配当株式プラスです。zニッセイグローバル好配当株式プラスは特殊な運用をおこなっている投信です。
今回は同投信の特徴をお伝えした上で、運用実績や見通しを含めて分析していきたいと思います。
ニッセイグローバル好配当株式プラス(毎月決算型)の特徴
ニッセイグローバル好配当株式プラスの特徴についてみていきましょう。
好配当株式投資とプレミアムプラス戦略のミックスで7%のインカムゲインを狙う
まず第一戦略としてインカムゲインを狙う二つの戦略について紹介します。
まずは単純に約3.5%の高配当銘柄に投資をして配当を獲得します。高配当ではなく好配当と記載しているところが渋いですね。
加えてオプションを用いたプレミアムプラス戦略で3.5%程度の収益獲得を狙います。
<プレミアムプラス戦略とは> オプション取引を活用し、オプション料(プレミアム)収入の獲得により、安定した収益の確保をめざす戦略をいいます。主として、保有株式の一定水準以上の値上がり益を放棄する見返りとして、オプション料を受取る取引を行います。このような取引はカバード・コール戦略と呼ばれることもあります。 なお、当ファンドはオプション取引に際し、各銘柄の見通し(期待リターン、確信度、ボラティリティ等)にもとづき、「権利行使価格」「カバー率 (該当銘柄の評価額に対するコールオプションの割合)」 等をきめ細かく決定し 個別銘柄ごとのオプション取引を行うことで 株価上昇時の値上がり益も追求します。また、原則として同一銘柄に対して複数のオプション取引を行い、「権利行使価格」「満期日」等の 分散を図ります。
参照:販売用資料
カバードコール戦略というのは、株式を保有すると同時にコールオプションの売りを組み合わせる戦略です。
コールオプションを売るということは株価が下落すると損を被りますが、株価が下落しない限りはオプション料(=保険料)を受け取ることができる戦略です。
つまりある程度以上の株価上昇を諦める代わりにオプション料を獲得するという戦略です。
ただ、上記の図をみていただければわかる通り、株価が下落したら損失を被ります。
好配当株式の値上がり益
高配当株式の値上がりも同時にねらっていきます。つまり、インカムゲインだけでなくキャピタルゲイン(=値上がり益)も狙っていくということですね。
オールドエコノミーが多い構成上位銘柄
2023年3月末時点での構成上位銘柄は以下となります。
銘柄 | 国 | 業種 | 比率 |
インテル | 米国 | 情報技術 | 3.10% |
コンチネンタル | ドイツ | 一般消費財・サービス | 3.10% |
ブリヂストン | 日本 | 一般消費財・サービス | 2.70% |
ハイデルベルグセメント | ドイツ | 素材 | 2.70% |
電通グループ | 日本 | コミュニケーション・サービス | 2.70% |
オランジュ | フランス | コミュニケーション・サービス | 2.70% |
インテーザ・サンパオロ | イタリア | 金融 | 2.60% |
グラクソ・スミスクライン | イギリス | ヘルスケア | 2.60% |
KDDI | 日本 | コミュニケーション・サービス | 2.50% |
サノフィ | フランス | ヘルスケア | 2.50% |
勢いのあるグロース銘柄というよりはインテルやコンチネンタル、ブリヂストンなどの成熟銘柄が多く組み入れられています。
インテルはここ5年株価が下落し続けていますが、それでもポートフォリオ1位に君臨しています。
組み入れ国別比率では基本的には、このような投信では米国の組入比率が50%を超えますが、昨年まではイギリスが最も多いという珍しい構成比率となっていました。現在は米国が一位ですね。
2022年3月末 | 比率 | 2022年10月末 | 比率 |
米国 | 23.70% | イギリス | 23.10% |
イギリス | 19.50% | 米国 | 21.70% |
日本 | 14.50% | 日本 | 16.20% |
ドイツ | 14.00% | ドイツ | 11.90% |
フランス | 10.60% | フランス | 9.70% |
イタリア | 6.00% | イタリア | 7.00% |
スイス | 2.20% | スペイン | 2.10% |
台湾 | 2.10% | スイス | 1.90% |
韓国 | 2.00% | シンガポール | 1.80% |
その他 | 5.50% | その他 | 4.70% |
毎月分配で特別分配金を出している
現在2023年5月時点で毎月30円の分配金を出しています。年間になおすと360円です。
ちなみに現在の基準価額は1656円となっています。つまり20%以上の分配金をだしています。
年間リターン20%とは程遠い水準で推移しています。そのため元本から分配金をだしており基準価額は下落し続けています。
特別分配金をだしているということは信託手数料を支払いながら預金をひきだしている状態ということを意味します。
配当金をもらえると喜んでいたら、最後引き出す時に元本が5分の1になっているという事態になっているのです。
手数料は高めに設定されている
ニッセイグローバル好配当株式プラスの購入手数料と信託手数料は以下となります。
購入手数料:税込3.3%
信託手数料:年率1.72%
となります。アクティブ投信の中でも高い水準ですね。
ニッセイグローバル好配当株式プラス(毎月決算型)の運用実績
ニッセイグローバル好配当株式プラス(毎月決算型)の運用実績は以下となります。
配当金を出さない場合の税引前分配金再投資基準価額は2011年から堅調な世界経済を受けて3倍になっています。しかし、あまりにも高い分配金を出しているので基準価額は運用開始時の5分の1になっています。
分配金をだすと普通分配金部分は税金が取られますし複利効果もないので、実際に受け取れるリターンは税引前分配金再投資基準価額ほどのリターンは得られません。
特別分配金に気付き掲示板では厳しいコメントが散見される
流石に基準価額の下落が激しすぎて懸念されるコメントが多く見られます。
コメント①
ここもうダメでしょ!
次1500円行くね
コメント②
組んでいる銘柄個々を見てないけど、昨日
欧州 アメリカが爆上げでこの下げだけは理解できない。
今後の見通しは?リセッション局面で売り込まれる成熟銘柄
重要なのは今後の見通しです。現在、世界的なインフレがピークアウトの兆候を迎えていて、今度はリセッションを織り込む形で金利が低下を始めています。
つまり2023年後半の景気後退が訪れようとしているということを市場は織り込み始めているのです。
2022年からの世界的なベア相場では、まずグロース株が下落していきます。実際、2021年末から成長株が多く組み入れられているナスダック蘇澳号指数はいち早く下落していきました。
一方、以前として成熟企業の下落は軽く2022年を通して5%ほどの下落にとどまっています。
しかし、ターンは順番に訪れます。景気後退が鮮明になると、金利が低下してグロース株は行きを吹き返し始めます。
一方、リセッションとなると企業収益の低下が鮮明となるので、今まで耐えていた成熟企業が本格的に下落を開始します。
まさにニッセイグローバル好配当株式プラスが投資しているような銘柄が最も手痛い打撃を被ることが想定されるのです。
まとめ
今回のポイントをまとめると以下となります。
ポイント
- 高配当銘柄とオプション戦略を用いてインカムゲインとキャピタルゲインの両方を狙うファンド
- リターンに対して高すぎる配当利回りで殆どが特別分配金となってしまっている
- 分配金再投資前では今までは好調な市場の追い風を受けて堅調となっている
- しかし2023年はリセッションの影響で組み入れている成熟銘柄への打撃が想定される