2017年〜2018年に日本中を巻き込むバブルを起こした仮想通貨。当時の市場の盛り上がりは凄まじいものでした。
筆者自身も遊びで2017年6月に50万円でビットコインを買いましたが、その後その価値は4倍にまで膨らみました。しかし、コインチェックのNEM流出事件などもあり、その後仮想通貨市場は暴落しました。
暴落前に運よく売り抜けた人々も多く、大きく資産を増やした人が続出した事象でした。近年稀に見る、まさに「バブル」といえる現象でした。
その仮想通貨市場ですが、現在コロナショックもあり、米国を中心とした超低金利政策もあり、投機性の高いビットコイン(仮想通貨・クリプト関連)は再度バブルへ発展しました。なんと2021年11月に681万円まで上昇しました。
一時、この仮想通貨市場の盛り上がりを見て、1000万円の資産を持つ友人が「1億円を目指すためには仮想通貨しかない」と発言していました。
既にバブルは収まり、仮想通貨は大暴落し、複数の取引所も破綻するなど2022年末の現在は地獄の様相です。
しかし、多くの人が「仮想通貨しかない」と希望を持つ現象に興味が出てきたので、今回は仮想通貨など投機的な投資対象で資産運用をするとはどういうことなのかを考えていきたいと思います。
仮想通貨とは
仮想通貨とはそもそも何か?概要説明は不要だと思いますし、詳細説明にすると複雑すぎるので、あまり深くはここでは説明しません。概要だけおさらいをしておきましょう。
日本の仮想通貨取引口座として代表的なビットフライヤーの定義を見てみましょう。
仮想通貨とは、インターネットを通じて不特定多数の間で物品やサービスの対価に使用でき、中央銀行などの公的な発行主体や管理者が存在せず専門の取引所を介して円やドル・ユーロ・人民元などの通貨と交換できます。仮想通貨の種類は1,500 種類以上あるといわれています。
資金決済に関する法律 第二条 5による定義:
この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
特徴としては、国家が保証していない通貨であり(日本円などは「法定通貨」と呼ばれ政府がその価値を保証しています)、暗号化されたデジタル資産である、ということです。これまでは通貨は国が保証することにより価値を発揮していました。国が保証しなければ我々の1万円札などただの紙切れです。
仮想通貨は国の保証なしに、「人々が仮想通貨に信頼を置く」ことで価値を発揮させるという、歴史的な出来事なのです。
また、デジタル資産である、これについては、全ての取引をデジタルで行うことにより、管理コスト削減、マネーロンダリング(通貨偽装、脱税)などを消滅させる破壊力を持っています。外貨との両替コストなども、世界共通通貨なのでかかりません。これは画期的ですよね。
ただし、上記で述べたように仮想通貨は人々が信頼を置くことが大前提になっており、また国がデジタル資産を認めない旨の法律を作ってしまえば途端に価値のないものになるリスクも秘めています。ただの電子データに成り下がってしまうのです。(とはいえ、強大なコミュニティ形成ができれば、価値は発揮できますがそれはまだまだ先の話ですね)
現時点で日本政府はどのように仮想通貨を認識しているかは、日銀のホームページに記載されています。
「暗号資産(仮想通貨)」とは、インターネット上でやりとりできる財産的価値であり、「資金決済に関する法律」において、次の性質をもつものと定義されています。
- (1)不特定の者に対して、代金の支払い等に使用でき、かつ、法定通貨(日本円や米国ドル等)と相互に交換できる
- (2)電子的に記録され、移転できる
- (3)法定通貨または法定通貨建ての資産(プリペイドカード等)ではない
代表的な暗号資産には、ビットコインやイーサリウムなどがあります。
暗号資産は、銀行等の第三者を介することなく、財産的価値をやり取りすることが可能な仕組みとして、高い注目を集めました。一般に、暗号資産は、「交換所」や「取引所」と呼ばれる事業者(暗号資産交換業者)から入手・換金することができます。暗号資産交換業は、金融庁・財務局の登録を受けた事業者のみが行うことができます。
暗号資産は、国家やその中央銀行によって発行された、法定通貨ではありません。また、裏付け資産を持っていないことなどから、利用者の需給関係などのさまざまな要因によって、暗号資産の価格が大きく変動する傾向にある点には注意が必要です。
また、暗号資産に関する詐欺などの事例も数多く報告されていますので、注意が必要です。
現時点では、資産として国も認めているといったような書きぶりになっています。
個人的には、仮想通貨で人々が生活する日は間違いなく来ると考えていますが、かなりの時間を要するでしょう。
今我々が使用している円などの価値を超えることになりますので、人々の信頼を獲得するには徐々に認識を浸透させていく必要があります。現時点では「投機資産」として認識している人の方がはるかに多いので。
かなりざっくりとした説明でしたが、仮想通貨の今後の動向は常に気にしていきたいと思っています。
仮想通貨の種類
仮想通貨の種類は、実に3000種類を超えます。
株式市場に上場することをIPO(Initial Public Offering)と言いますが、仮想通貨を取引所で取引できるようにすることをICO(Initial Coin Offering、新規仮想通貨公開)と言います。
日本でICOしている、購入できる代表銘柄は13種類あります。
- ビットコイン(BTC)
- イーサリアム(ETH)
- リップル(XRP)
- ビットコインキャッシュ(BCH)
- ライトコイン(LTC)
- イーサリアムクラシック(ETC)
- モナコイン(MONA)
- ネム(NEM)
- ファクトム(FCT)
- リスク(LSK)
- ステラルーメン(XLM)
- クアンタム(QTUM)
- ベーシックアテンショントークン(BAT)
こちらはコインデスクさんのページを参考にさせていただきました。
ビットコインが王道中の王道である通貨です。ブランドで言えば、ルイヴィトンみたいなものですね。
ビットコイン(Bitcoin)は、2008年にサトシ・ナカモトという人物によって公開された「ビットコイン: P2P 電子通貨システム」がきっかけとなって開発され、翌年の2009年から稼働しているシステムである。ビットコイン(Bitcoin)の一番の特徴は、P2P技術に基づく分散型のシステムによって、公的な発行主体や管理者が存在しない非中央集権型の電子決済システムを実現した点にある。従来の決済システムは、第三者的な仲介者が存在することで、取引が成立していたが、ビットコイン(Bitcoin)の場合、この仲介者が存在せず、参加者全員で管理する世界初の分散型の決済システムを構築したことが画期的なポイントである。
イーサリアム(ETH)は元宮崎県知事である東国原氏が購入する予定だったとつぶやいたことで、知名度が上昇しました。
コインチェック騒動で購入には至らなかったようですが。
リップル(XRP)に関しても誕生から数百倍の価値の上昇があり、日本国内でも多くの億り人を出しました。
クリス・ラーセン氏は米国のリップル社を創設した人の一人で、現在はリップル社の会長です。創設をした時点で多くのリップル(XRP)を保有しており、2018年時点では52億XRPを保有していると言われていました。
リップル(XRP)も、ビットコイン(BTC)と同様に、誕生時から現在にかけて価格が数百倍以上になっていることを考えれば、彼がリップル(XRP)で億を超える資産を形成したことは言うまでもありません。
夢があるとも言える仮想通貨。しかし、例えばまとまった資産である1000万円以上の運用には適しているのでしょうか?
すでに超リスク資産という認識をお持ちの方が多いと思いますが、その認識は正しいです。
ネム(NEM)のコインチェックによる仮想通貨流出事件はあまりにも影響が大きい事象でした。
仮想通貨取引所大手のコインチェック(東京・渋谷)は26日、利用者から預かっている約580億円分の仮想通貨が外部からの不正アクセスにより流出したと発表した。2014年に日本のビットコイン取引所だった「マウントゴックス」が約470億円分を消失させて以来、過去最大の仮想通貨の流出となる。
出所:日経新聞
仮想通貨の不正な資金流出の主な事例:
取引所・組織 | 時期 | 被害額 |
---|---|---|
マウントゴックス(日本) | 2014年 | 約470億円 |
ナイスハッシュ(スロベニア) | 17年 | 約70億円 |
ビットフィネックス(香港) | 16年 | 約65億円 |
ザ・ダオ(独) | 16年 | 約65億円 |
パリティーウォレット(英) | 17年 | 約30億円 |
ビットスタンプ(スロベニア) | 15年 | 約5億円 |
また、2020年9月9日では欧州でも以下のようなニュースも出ています。
欧州の仮想通貨(暗号資産)取引所ETERBASEのホットウォレットから、複数の銘柄が不正流出したことが分かった。
問題発覚後ETERBASEは取引所をメンテナンスモードに切り替え、法執行機関に本件を報告。顧客の預け入れ資産に被害が及ばないように必要な対策を講じた。流出した資産を受け取った可能性のある取引所には、すでに連絡も行っているとしている。
流出が確認されている仮想通貨は以下の6銘柄(ERC20トークンは現時点では、統一してカウント)。ETERBASEは被害額は明らかにしていないが、TheBlockは以下のように調査を行った。
被害総額はおよそ532.3万ドル(約5.6億円)。最も多く流出したのはイーサリアム(ETH)・ERC20トークンで、およそ395万ドル相当(約4.2億円)だ。
現在(9日7時時点)の最新の状況は、法執行機関と協力しながら現在も捜査を行っているステータスにある。
新しいもの、には常にリスクが付き纏います。ハイリスクハイリターンの世界なのです。2022年時点では仮想通貨の価値というよろも、仮想通貨ブームを活用した詐欺も横行しています。FTXの破綻などは時代を象徴したものとも言えるでしょう。
FTXは業界では優等生と言われ、堅実な運用がなされていると評判でした。あの大谷翔平選手や大坂なおみなどが広告塔にもなっており(両選手は完全に巻き込み事故状態)、ソフトバンクグループの投資先でもありました。
経営破綻した暗号資産(仮想通貨)交換業大手のFTXトレーディングのずさんな経営が明らかになった。詳しい財務状況はいまだに不明で負債総額も確定できていない。創業者サム・バンクマン・フリード氏個人への融資など、会社資金の私的流用の疑いも浮上した。実態の解明や債権回収に至るまでに相当な時間がかかる可能性がある。
暗号資産取引所のFTXが破綻した余波が収まる兆しはなく、いまや暗号資産の業界において最も重要な組織のひとつに脅威が及んでいる。暗号資産レンディング(貸し付け)で知られるGenesis Global Capitalの融資部門が2022年11月16日、「前例のない市場の混乱」を理由に資金の引き出しを停止したのだ。
1000万円を仮想通貨で運用するという選択肢
ズバッと結論を言うと、マネーリテラシーの高い投資家は仮想通貨にまとまった資金を投じることはありません。資産の5%など、一応持っておく、というスタンスの投資家が多いでしょう。
1億円あったら100万円くらい入れとくか、とかそんな感じです。1000万円持ってて1000万円仮想通貨に入れるのはあり得ないです。「一発逆転思考」からまだ抜け出せていない人が仮想通貨に大金を入れます。
私自身も資産の1%である50万円だけ、「持っていないことによるリスク」を避けている状況になります。
資産形成の基本はホームランを打つことではありません。細かくヒットを積み重ねていくことです。
ヒットがたまたまホームランになった、という投資を続けていくべきなのです。
ホームランを狙うにはどうしてもハイリスクハイリターンとなってしまい、せっかく育ててきた大事な元本である1000万円などを大きく毀損してしまう確率が高まります。
以下は仮想通貨の中で「一番安定している」と言われているビットコインの動きです。
高いボラティリティを持ちつつ、近年は低迷していることがよくわかりますね。ただし、夢を見たい気持ちも少なからずわかります。
例えば、私自身もビットコインに1000万円、2016年の5月の50万円/1ビットコイン水準だった頃に購入していれば、実に一年も経たずに4000万円の資産に到達していたのです。
(正確にはビットコインなど仮想通貨は累進課税(雑所得)なので、実現益3000万円に50%以上税金がかかりますので、手元には(元本1000;実現益税後1000)2000万円しか残りません...)
株式投資では、証券会社の特定口座を利用している場合など、会社員は確定申告が不要です。また、株やFX(外国為替証拠金取引)は、租税特別措置法によって特例的に税率が約20%に軽減される上に、損失を翌年以後3年間にわたって繰り越しできます。
対して仮想通貨は、累進課税のため税率は最大55%(住民税含む)、特例がある場合を除き、翌年以降に損失を繰り越すこともできません。
株式投資や不動産投資は、「キャピタルゲイン税」(譲渡所得税、売買益)が大きな魅力です。最大税率は20.315%(所得税15.315%+住民税5%)であり、資産形成には非常に追い風です。
サラリーマンで年収を上げても、累進課税のせいで、年収をあげればあげるほど納税する金額が跳ね上がります。
そのことから、あの世界一の投資家であるウォーレン・バフェット氏も長年、年収1000万円以上はサラリーを貰っていませんし、資産家ほど年収を低くして、キャピタルゲインで資産形成をしていきます。
仮想通貨についてはキャピタルゲイン税が適用できないので、税制的にも不利な投資になっています。仮想通貨で100万円が1億円になっても、5000万円以上が課税されてしまいます。累進課税というやつです。
最後に、仮想通貨の今後の展望
上記で仮想通貨はボラティリティも高く、税制的にも不利なので、未来に自身が保有していないリスクを回避して少額投資するのはありかもしれないという見解を示しました。
その理由は特になく、宝くじのようなものです。ある日世界がガラッと変わってしまい、仮想通貨に頼らざる未来が来てしまった場合に備えるだけです。
2022年は株式市場が大暴落していますので、仮想通貨もボロボロです。しかし、多くの投資家が仮想通貨に興味を失っているからこそ、今は本当は仕込み場なのかもしれませんね。
長期投資を考えるのであれば、まとまった資金を仮想通貨に投資する、ということはおすすめしません。いつ仮想通貨が日の目を見るのかわかりかねず、もしかしたら仮想通貨自体成立しない見通しが出てくると、信じて待っていた期間(時間)がそのまま損失になるからです。
長期でしっかり資産を形成していきたい方に、堅実でリスクの低いおすすめ投資先の記事を書いていますので、そちらを参考にしてみてください。
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