「グローバルロボティクス」という言葉をふと職場で聞いたのですが、有名なのでしょうか?
評判が良いようでしたが、私は実態を自分で掴むまでは信用しません。
ロボアドバイザーなど、AIがあなたの代わりに資産運用、という類の商品が近年は流行っていますが、その一種なのでしょうか?
興味が出たので、投資信託の分析が趣味の私も今回は少し毛色が違いますが、「グローバルロボティクス」を分析してみました。
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グローバルロボティクスとはどのような商品なのか
交付目論見書の表紙からすでに洗練されたデザインで期待感を覚えます。
どれくらいのハイリターンをロボットがもたらしてくれるのでしょうか。
世界各国の株式の中から主にロボティクス関連企業の株式に投資を行う。産業用やサービス用などのロボットを製作する企業のみならず、ロボット関連技術であるAI(人工知能)やセンサーなどの開発に携わる企業も投資対象とする。
銘柄選定は、株式のアクティブ運用に注力するラザード社が、徹底した調査に基づき行う。外貨建資産への投資にあたっては、原則として為替ヘッジを行わない。ファミリーファンド方式で運用。7月決算。
完全に勘違いしておりました。ロボティクス関連企業の株式に投資をする投資信託なのですね。
結局投資信託の分析記事となってしまいました。じっくり内容を見ていきたいと思います。
交付目論見書:https://www.nikkoam.com/files/fund_pdf/642851/file/642851moku.pdf
[グローバル・ロボティクス株式ファンド]
- 設定日:2015年8月31日
- 純資産:297,674百万円
- 決算日:毎年7月20日
[商品分類]
- 単位型・ 追加型:追加型
- 投資対象 地域:内外
- 投資対象資産 (収益の源泉):株式
[属性区分]
- 決算頻度:年1回
- 投資対象 地域:グローバル
- 投資形態:ファミリー ファンド
- 対象インデックス:なし
ファンドの目的
主として、日本を含む世界各国の金融商品取引所に上場されているロボティクス関連企業の株式に投資を行い、中長期的な信託財産の成長を目指して運用を行います。
ファンドの特色
- 世界各国の株式の中から主にロボティクス関連企業の株式 に投資を行ないます。
- 銘柄選定は、株式のアクティブ運用に注力するラザード社が、 徹底した調査に基づき行ないます。
- 年1回、決算を行ないます。
運用は米国の大手運用会社、ラザード社が運用を行なっています。
ロボット業界への投資を色濃く説明している目論見書でした。
加速度的な成長が期待されるロボット業界
ロボットというと、日本人であればAibo(ソニーのペットロボットシリーズ)から始まり、今では工場などが自動化を目指すにあたり、産業ロボットなどが長年注目を集めています。
日本では少子高齢化が加速する中で、労働人口の減少を解決するには外国人労働者を増やすか、ロボットで代替するか、という時代です。
そんなロボット産業に特化して投資をするのは流行りでもなんでもなく、将来を見越した手堅い投資だと個人的には思いました。
IoT、AIもロボット産業に明確にリンクする産業であり、これらに関連する多くのスタートアップが日本でも毎日生まれています。
日本は少し後塵を拝していますが、自動運転分野でも、ロボタクシーなど先進国を中心にロボティクス産業は主要産業になる勢いです。
現在電気自動車で注目のテスラに関しても、ロボタクシーの実現に一番早いと市場では評価されていますね。
ロボット産業の未来が明るいことは、誰の目から見てもわかります。
(たまにSNSなどで、自動運転車などが誤走した動画が取り沙汰され、ロボットはだめ!というような意見もよく聞きますが、1/1,000,000くらいの確率で起こったような事故のみを見て、いちゃもんをつけるのはよくないと思いました)
ロボットによって労働生産性は上がる未来が見える、つまりロボット産業の未来は明るいのですが、投資においては別の視点が大切です。
誰もがロボット産業の未来は明るいことがわかっているということはすでに株式市場に存在する投資家は投資済みです。今からでは明らかに遅いのです。
ポートフォリオや運用成績の話に入る前に話を折ってしまい申し訳ないのですが、「テーマ株」を扱う投資信託はトレンドが来たときのみ良い商品です。
時期を間違えると痛い目に合います。つまり、マーケットタイミングを取るということになりますので、難易度が高すぎる投資であることを頭に入れておきましょう。
ポートフォリオ・投資先銘柄
では、グローバル・ロボティクス株式ファンドは実際にどのような企業に投資をしているのでしょうか?
保有銘柄を見ていきたいと思います。
組み入れ上位国と銘柄を見ていきましょう。
国名 | 比率(%) |
アメリカ | 45.2 |
日本 | 31.7 |
スイス | 4.1 |
アイルランド | 4 |
フランス | 3.7 |
やはり技術に強みを持つ先進国である米国と日本の比率がぶっちぎりです。
銘柄 | 国名 | 業種 | 比率(%) |
ALPHABET INC-CL C | アメリカ | コミュニケー ション・サービス |
5.6 |
キーエンス | 日本 | 情報技術 | 4.9 |
ABB LTD-REG | スイス | 資本財・ サービス |
4.1 |
SCHNEIDER ELECTRIC SE | フランス | 資本財・ サービス |
3.7 |
日立製作所 | 日本 | 情報技術 | 3.6 |
HONEYWELL INTERNATIONAL INC | アメリカ | 資本財・ サービス |
3.5 |
INTUITIVE SURGICAL INC | アメリカ | ヘルスケア | 3.4 |
HEXAGON AB-B SHS | スウェーデン | 情報技術 | 3.3 |
ダイフク | 日本 | 資本財・ サービス |
3.1 |
ファナック | 日本 | 資本財・ サービス |
3.1 |
なんとアルファベットが最上位です。GOOGLEですね。
2位は日本が誇るキーエンスです。
GOOGLEをロボティクス投資の核としている理由は、たしかに以前より、同社のロボット企業の買収は話題になっていました。
米グーグルが8社目のロボット企業買収、4足歩行ロボットなど手がける米Boston Dynamics
米グーグルは、米ロボット開発を手がける米Boston Dynamicsを買収した。米New York Timesが報じた。ロボット関連では、8社目の買収になるという。
米Boston Dynamicsは、マサチューセッツ工科大学(MIT)でのロボットと人工知能研究をもとに1992年創業した。DARPA(国防高等研究計画局)の出資による4足歩行ロボット「BigDog」などの開発で知られている。DARPAのほか、米国軍やソニーなどに製品・技術提供をしているという。
出所:https://www.sbbit.jp/article/cont1/27339
グーグル、ロボット事業を本格化 東大のVB含む7社を買収済み
グーグルのラリー・ペイジCEOは3日、自身のブログで米ニューヨーク・タイムズの記事を紹介。ペイジ氏自身は詳細に触れなかったものの、その中でAndroidの開発責任者だったアンディ・ルービン氏が、グーグルがロボット事業を手がける7社を買収していたことを明らかにした。
出所:https://www.sbbit.jp/article/cont1/27282
GOOGLEは検索エンジンで企業として大きくなり、検索エンジンにもAIシステムを搭載し検索結果を表示する、広告を出すなどして大きな収益を叩き出していますが、ロボット産業にも積極的に進出していました。
しかし、2019年時点でロボット事業は縮小したというニュースも目にしました。
Googleはロボット事業を縮小し、方針転換を図る
2013年、Google(グーグル)はロボティック分野に大々的に進出した。Androidの父ことAndy Rubin(アンディ・ルービン)氏のもと、Boston Dynamicsなど複数社を買収したのだ。ブレードランナーにあやかってReplicantと名付けられたこの部門は、親会社となるAlphabetの下で密かに運営されていたが、数年以内にシャットダウンされることとなる。
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むしろ、製造業や倉庫運用などに必要なハードウェアに注力しているのだ。これは、Amazonの倉庫用ロボットを連想させる。どうやら、Googleはより身近な問題、とくにオートメーション分野でよく話題に上る「単調で、汚く、危険な(dull、dirty、dangerous、Ds)」を解決しようとしているようだ。
出所:https://jp.techcrunch.com/2019/03/28/2019-03-27-google-has-scaled-back-moved-forward-with-robotics/
現在はオートメーション分野のハードウェアに注力しているようで、ロボット事業というよりもオートメーション事業に特化し始めたということですね。
とはいっても、GOOGLEの収益源はとにかく広告です。この広告が四半期で5000億円以上の利益を叩き出しており、投資家もメインの広告ビジネスに期待して投資しているので、ロボティクス産業に特化した投資信託としては少し矛盾を感じてしまいます(リターンがよければよいという話ももちろんあります)。
基準価額とリターン・利回り・見通し
基準価額とリターンを見ていきましょう。
基準価額は2019年にもたついたものの、しっかりと上昇し、コロナショックのダメージも回復。しかし、直近1年で見るとやはりトレンドが終わったような動きを見せています。
純資産額が増えつつも基準価額が下がっています。上記で述べた「もう遅い」ことに気づかない投資家がたくさん投資をして、運用はふるわない、ということだと思います。
年間収益の推移を見ていきましょう。
2021年は1月末までで2.7%。3月まではバブル相場でしたからね。いよいよ2021年後半からはテーパリング、米利上げが発表されるのではないかという観測が多く、多くのファンドがリターンを思いっきり下げると思います。下落耐性の強いファンドが輝く時代が数年は続くと思います。
2020年のパフォーマンスは28.8%とすごいですが、金融緩和じゃぶじゃぶ状態で思いっきり夢投資として資金が入った結果、2019年はまさにトレンドの絶頂だったと説明できます。
あまりにも「テーマ株」に投資している投信ですから、投資家としての観点から明るい未来は見えません。もう投資先としては終わったのではないかと考えてしまいます。
2020年の株価の動きは以下のような感じです。株式市場に特大ボーナスがあったのです。FRBのBS拡大、金融緩和、国民への給付金、テクノロジーセクターの業績向上。
もう二度とこのような年はないかもしれません。
投資をする上で、気にしなければならないのが「標準偏差」です。つまり、「リスク量」です。リスクとは危険なことではありません。不確実性です。
不確実性が低く、リターンが高い投資先が良い投資先です。標準偏差は低ければ低いほど良いです。
グローバルロボティクスの標準偏差は直近1年が21.87、3年21.24、5年19.72と年々高くなっています。
標準偏差とはリスク量を測る指標です。高ければ高いほどリスクがあります。
新興国投資をするETFであるVWOが18程度であり、その水準を上回る数字はやはり、投資をするにはリスクが高めです。
ロボット産業はたしかに成長産業でもありますが、2020年現在では競争が激しく、勝ち組、負け組がはっきりと分かれ始める時期に来ています。
ロボット産業に期待しつつ、グローバルロボティクスの判断を信用するのであれば、よい商品と言えるでしょう。
私は少しトレンド要素としては遅いかなという印象です。
購入方法 解約方法 手数料 配当(分配金)
グローバル・ロボティクス株式ファンドはネット証券で購入するのが簡単です。
手数料は信託報酬のみですが、1.936%と高めです。
アクティブファンドですので、安定的にリターンを獲得するインデックスファンドの0.8%程度の手数料に比べるとやはり高いです。
対面営業などで購入する場合は3.3%の手数料がかかるので注意。
分配金の実績は今の所ありません。
まとめ
ロボティクス産業への投資をする投資信託でしたが、広告業がメインのGOOGLEがポートフォリオの一位に違和感を覚えつつも、これまでのリターンは高めですので投資家としては満足しているかもしれません。
今後もロボットをテーマとした投資は伸びるかと思いますが、銘柄選定が重要な時期に差し掛かっています。
標準偏差(リスク)も高く、手数料も比較的高めですので、確信を持って、後悔のない投資をするようにしましょう。
あえて、有望なファンドが複数ある中でグローバルロボティクスを選ぶ必要はないと思います。
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