投資の世界も海外の株式に簡単にアクセスできるようになりグローバル化の波が押し寄せています。
全世界の魅力的な銘柄に投資したいと考えて、投資先を探している方も増えていることかと思います。
そのような方の中には今回お伝えする「グローバルハイクオリティ成長株式ファンド」に行き当たる方もいらっしゃると思います。
未来の世界という愛称で親しまれており、名前の格好よさから惹かれたという方も多いのではないでしょうか。
本日は投信「未来の世界」について以下の観点から紐解いていきたいと思います。
- どのような投信なのか?
- 運用実績は魅力的なのか?
- 投資する妙味はあるのか?
グローバルハイクオリティ成長株式ファンド(愛称:未来の世界)の特徴
ではまず、「未来の世界」の特徴についてみていきましょう。
投資する世界のハイクオリティ銘柄とは?
グローバルハイクオリティ成長株式ファンドという名前からわかる通り、世界のハイクオリティな成長株に投資をすることになっています。
このハイクオリティな銘柄の特徴として以下の5つの観点を挙げています。
- 競争優位性
- ディスラプティブ・チェンジ
- 成長性
- 財務健全性
- ESG評価
ディスラプティブチェンジとは革新的変化の中で持続的に成長可能なビジネスモデルを持っているかという判断基準です。
ESG評価は環境や社会のネガティブな影響が限定的であることや企業統治が強固であることを評価基準としています。
これらの銘柄を絞った上で、割安な銘柄に投資をするというシンプルな銘柄選定方針となっています。
割安であるかの判断には短期的な企業のバリュエーションや足元のキャッシュ・フローだけではなく、
長期的に創出されるキャッシュ・フローも重視して長期目線で割安かどうかの判断を行なっているそうです。
つまりバリュー株ではなくグロース株に投資をするということですね。
→ グロース株投資とバリュー株投資の違いとは?どっちが魅力的なのかをデータを用いて比較して考察する。
図にしてわかりやすく示すと以下となります。
25銘柄から50銘柄に厳選しているので「ひふみ投信」のように250銘柄に投資している銘柄よりは銘柄を絞れています。
もはや250銘柄に投資していたら日経平均と変わらない成績しか出せませんからね。
参照:やめたほうがいい?評判だった「ひふみ投信」「ひふみプラス」の時代は終わった?まだ上がる?暴落に弱くなった理由を徹底評価
ファンドマネージャーのクリスチャン・ヒュー氏とは?
投資信託としては珍しくファンドマネージャーが誰なのか明かされています。
運用者はクリスチャン・ヒュー氏です。ウルフ・オブ・ウォール・ストリートのデカプリオを彷彿とさせる顔立ちですね。
彼はアセットマネジメントOneの社員ではなくモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントの運用責任者です。
未来の世界は同社のグローバル・オポチュニティ株式運用戦略を用いて運用しているので実質的な運用者はモルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント社ということになります。
クリスチャン・ヒュー氏は米デューク大学経済学部を卒業後、新卒で2001年モルガンスタンレー・インベストメント・マネジメントに入社して20年間同社で経験を積んでいます。
現在は株式運用チームの運用責任者に就任しており、グローバル型投資の責任者を勤めています。
構成上位10銘柄
では実際どのような構成上位銘柄なのかみていきましょう。
以下は2022年5末時点での構成上位銘柄ですが、10銘柄で54.2%と半分以上を占めています。
銘柄 | 国 | 比率 | 比率 |
サービスナウ | 米国 | 7.4% | 企業の業務を効率化する統合的サービス管理プラットフォーム |
HDFC銀行 | インド | 6.8% | インドの民間銀行最大手 |
ウーバー | 米国 | 6.8% | 世界各地でアプリ上での配車サービスを展開 |
DSV | デンマーク | 6.5% | デンマークに本社のある運輸会社 |
メタ(元FB) | 米国 | 4.7% | 元フェイスブック。メタバース実現に向けて再始動 |
アマゾン | 米国 | 4.5% | Eコマースとクラウド大手 |
ディスニー | 米国 | 4.3% | ディズニーランド運営と動画配信 |
アドビ | 米国 | 4.3% | 印刷および電子媒体で情報を伝達・使用可能な製品を提供するデジタルメディア |
メルカドリブレ | 米国 | 4.1% | 南米市場最大の電子取引サイトを運営 |
クーパン | 米国 | 3.8% | 韓国のeコマース最大手 |
サービスナス、メタ、アマゾン、アドビ、メルカドリブレ、クーパンなどのグロース株を取り入れる一方、HDFC銀行、DSVなどのバリュー株もバランスよく組み入れています。
以下の通り業種別ではハイテク企業が多い情報技術が最も大きな比率となっています。国別では米国が60%と、全世界に占める時価総額と同等の組み入れ比率となっています。
日本企業で組み入れるのに値する企業は1.8%しかなかったということは悲しい限りですね。
限定為替ヘッジはつけるべき?
米ドルやユーロなどの主要国通貨にい対して為替ヘッジをつける限定為替ヘッジというオプションをつけることは可能です。
といっても米ドルの比率が70%を超えているので実質ドル円のリスクをヘッジするかどうかという点が重要になってきます。
2022年6月末時点ではドル円は135円になっています。
しかし、これは日米の金利差に着目したものになっています。
米国はインフレ退治のために金利を引き上げている一方、日本はゼロ金利政策維持を明言していますからね。
しかし、米金利の上昇もいつか腰折れします。金利が上昇すると景気が悪化するからです。
景気が悪化した時点から金利は下落に転じてドル円も下落していきます。
現段階からはドル円は上昇するよりも下落のリスクの方が高いといえます。つまり限定為替ヘッジはつけたほうがよいと筆者は考えます。
手数料はアクティブ投信の中でも高めに設定
手数料はモルガン・スタンレーに運用を委託しているということもあり若干高めに設定されています。
購入手数料:3.3%
信託手数料:年率1.87%
「未来の世界」の運用実績とは?
では重要な運用実績についてみていきましょう。
2021年後半から下落に転する
以下は筆者のおすすめする限定為替ヘッジありの基準価額の推移です。
2021年の最高値から40%以上下落しています。最近分析しているハイテク関連ファンドと殆ど同じ動きをしていますね。
ナスダック総合指数や全世界株式インデックスと比較
投信が優秀な成績を収めているか評価するには。投資対象が似た指数のリターンと比べる必要があります。
「未来の世界」は米国のハイテク企業を投資対象としているためナスダック総合指数と、全世界の株式の平均と比較することにします。
青:未来の世界
赤:ナスダック総合指数
緑:全世界株式インデックス
未来の世界 | eMAXIS全世界 | ナスダック | |
リターン1年 | -26.24% | 9.50% | 3.07% |
リターン3年(年率) | 9.46% | 17.55% | 23.41% |
リターン5年(年率) | 11.20% | 12.20% | 17.71% |
シャープレシオ1年 | -1.19 | 0.61 | -- |
シャープレシオ3年 | 0.45 | 0.97 | -- |
シャープレシオ5年 | 0.59 | 0.72 | -- |
標準偏差1年 | 22.09 | 15.61 | -- |
標準偏差3年 | 20.89 | 18.08 | -- |
標準偏差5年 | 19.15 | 16.93 | -- |
リターンは殆ど同じとなっていますが、シャープレシオは全世界に大きく負ける結果となっています。
シャープレシオとは、1単位あたりのリスクでどれだけのリターンを得ることができるかという指標です。
シャープレシオが高いほど少ないリスクで高いリターンを獲得することができます。つまり世界の株式の平均の方が優れた成績を残しているということになります。
プラスのリターンを狙うアクティブファンドとしては優秀とはいえない結果となってしまっています。
「未来の世界」の下落している理由とは?今後の見通しは?
未来の世界が直近下落している理由は構成銘柄の多くを占める米国のハイテク銘柄に要因があります。
ハイテク銘柄は金融緩和局面で輝きます。パンデミックをうけた米国中郷銀行の2020年からの大規模緩和によってハイテクグロース株は急上昇していきました。
しかし、期待を織り込みすぎた結果、株価は異常なレベルの高値へと押し上げられました。
更に2021年末から米国のインフレが本格化してきたことによって金利を引き上げる金融引き締めを実施しています。
結果として2020年からの上昇相場の逆回転が発生しているのです。
そして、この流れは今後しばらく継続することが見込まれます。
なぜならインフレ率が高止まりを続けているからです。現在年率8.6%のインフレに対して政策金利は1.5%-1.75%と大幅にFRBは出遅れています。
米国のインフレがおさまる兆候を見せるまでしばらくは「投資の未来」にとっても厳しい環境が続くでしょう。
以下の記事ではなぜ金利が上昇すると株価が下落するのかという点も含めて詳しく解説しています。
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「投資の未来」の口コミや評判
投資の未来はリターンがよかった時は非常にもてはやされていたファンドでした。
https://twitter.com/dai_toushin_09/status/1305469835627827200?s=20&t=2rfbMstoUN0T1RrwM27eIQ
グローバルハイクオリティ成長株式ファンドはみずほとかでよく売れていたんだけど、このファンドはほんとわかりやすくて良い。組入銘柄は35銘柄前後と少なめ。そしてほぼ銘柄の入れ替えはない。
— kabuaka (@kabuaka12) October 12, 2020
しかし、リターンが悪化した2021年後半から殆ど言及されていません。流行している時は騒ぎ立てられますが、一度ブームがさると忘れ去れれるといったとこですね。
一昨年、投資をはじめてすぐ、試しに買ってみたグローバルハイクオリティ成長株式ファンドとニッセイ外国株式インデックスファンドは似た値動きを続けていましたが、昨年12月から大きな乖離が出るようになり、前者は今1%の含み益に対して後者は45%の含み益。
— MarketSurfer (@kabushikisurfer) February 2, 2022
まとめ
今回のポイントをまとめると以下となります。
ポイント
- 全世界の魅力的な銘柄を厳選して投資
- モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントが運用を担当
- 限定ヘッジはこれからはつけた方が良い可能性が高い
- 7割型米国銘柄で構成されている
- ハイテク銘柄の比率が高い
- リターンはナスダックと同様の動き
- 今後しばらく厳しい展開が想定される
資産運用において重要なのは、どのような市場環境でも安定したリターンを積み重ねていくことです。
以下では安定的に資産を構築していくことが可能なファンドをランキング形式でお伝えしていますので参考にしていただければと思います。