今日は人気投資信託シリーズで、現在買付ランキングTop10にランクインしている、日本株アルファ・カルテット(毎月分配型)についてです。
仕組みが難しい投資信託なので、そもそもどのような投資信託なのかということをわかりやすく紐解いていきたいと思います。
また、投資対象として魅力的なのかという点についてひも解いていきたいと思います。
日本株アルファ・カルテット(毎月分配型)はどんな投資信託?複雑な収益体系
日本株アルファ・カルテットは名前からも想像できるように複雑な仕組みで構成されています。
まずは詳しく日本株アルファ・カルテットの運用形態について見ていきたいと思います。
特徴①;アクティブ型の投資信託
まずは投資信託の分類として日経平均等の株式指数に連動するパッシブ型の投資信託と、指数に対してプラスのリターンを追求するアクティブ型の投資信託があります。
アクティブ運用型とパッシブ運用型の投資信託のどちらが優れているのか徹底比較!インデックス投資は本当に最強なのか?
皮肉なことにアクティブ型の投資信託がプラスのリターンを追求するにも拘わらず、パッシブ型の投資信託の方が高い成績を残しているという結果となっています。
日本株アルファ・カルテットは名前からも分かる通り、指数に対する+αを求める投資信託であることから、アクティブ型の投資信託となります。
特徴②;高金利通貨であるブラジルレアルでの運用
日本円は現在、ほぼ0金利なので日本円で保有していても金利を獲得できません。
世界にはかつての高度経済成長期の日本のように、10%の利回りを獲得することが出来る通貨が新興国には存在します。
日本株アルファ・カルテットは日本株のアクティブ運用に加えて円売り、ブラジルレアル買の為替取引を行い、金利収益を獲得しようという運用を行っております。
しかし金利を受け取る代わりに為替の変動により大きな損失を被る可能性があります。
魅力的なことばかりではないのです。
金利が高い国というのはインフレ率が高い国が殆どであり、「金利 - インフレ率」で表される実質金利が、日本よりも低い場合は為替レートが長期的に下落していきます。
つまり、高金利=お得と一概に考えない方がよいです。
特徴③:カバードコール戦略
カバードコール戦略というのはコールオプションを売ってオプションプレミアムを受け取る戦略です。
それではまず野村証券のコールオプションの説明をご覧ください。
ある商品を将来のある期日までに、その時の市場価格に関係なくあらかじめ決められた特定の価格(=権利行使価格)で買う権利のこと。コールオプションの取引は、買い方(買うことができる権利を買う)と売り方(買うことができる権利を売る)が同時に存在する。新規に取引を開始する際には、買方はプレミアム(オプション価格)を支払い、一方売方はプレミアムを受取る。その後決済時等に、買方が権利を行使すると、対象とする商品を権利行使価格で手に入れることができる。一方、売方はこの権利行使に応じなくてはならない。
<野村証券>
コールオプションの売りというのは、決められた期日が来たら決められた価格で株を買える権利を売るということです。
例えば現在株価が20000円で、権利行使日が1カ月後で権利行使価格が21,000円だとします。
1カ月後の株価が22,000円となっていたとしも買い手は21,000円で購入することが出来ますし、売り手は21,000円で販売しないといけないのです。
その代わり、上記のような権利を手にするかわり、オプションのプレミアムを支払います。
オプションの売り手はオプションのプレミアムが収入となるわけです。
日経平均(灰色)を保有しながら、日経平均先物のコールオプションを売り(青)の合成ポジションの損益(赤)です。
株価が上昇する過程では利益をプレミアム分上乗せできる反面、権利行使価格を超える場合は実勢よりも低い価格でオプションの買い手に引き渡さなければいけません。
株価上昇とオプション損が相殺する形で利益のキャップが為されてしまうのです。
日本アルファ・カルテットは株式と為替の運用額の純資産の約半分でカバード・コール戦略をとっております。
日本株アルファ・カルテットの収益構造
カバードコールが少し複雑でした。
今までのことから日本株アルファ・カルテットの収益構造は、
- インカムゲイン(配当・利息)として株式・為替のカバードコール戦略の受け取りオプション・プレミアム
- 為替取引よよる受取スワップ金利、株式からの配当収益
- キャピタルゲイン(値上がり益)として為替の上昇、株価の上昇益
を見込んでいます。(当然キャピタルロスもありますが・・・)
日本株アルファ・カルテット(毎月分配型)の運用収益を徹底分析
それでは肝心の日本株アルファ・カルテットの運用成績についてひも解いていきましょう。
日本株アルファ・カルテット単体の運用収益-低い運用成績に出しすぎている配当金拠出-
日本株アルファ・カルテットは黄色の基準価格をご覧頂ければ分かるのですが4.5年で基準価格が4分の1になっています。
一方、税引前配当金再投資後の価格は30%減の成績となっています。
日経平均の上昇に比べると物足らないどころかひどい成績です。
先程赤字で税引前と記載した通り、一旦配当金を拠出してしまうと約20%の税金を徴取されるので、再投資しても強い成績を出すことは出来ません。複利が効かない、と表現するべきでしょうか。
また現在分配金利回りは年間210円水準(2020年)なので配当利回りは11%という驚異的な水準になっています。
元本を切り崩しながら配当を出しておりますので、以前指摘しましたように支払わなくてもよい税金を支払うことになっているのです。
詳しくは毎月分配型投資信託の罠についてわかりやすく分析した以下記事をご覧頂ければと思います。
危ない?悪くない?不労所得生活を実現できると噂の「毎月分配型」投資信託は最強なのだろうか。メリット・デメリットを列挙しわかりやすく解説
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日本株アルファ・カルテットは日経平均に比べて劣る成績
日経アルファ・カルテットと以前分析したフィデリティ・日本成長株・ファンドと日経平均の、リターンのチャートを比較したものが以下になります。
上記は3年チャートで税引前分配金再投資後の成績なので、実際の日本株アルファ・カルテットの成績は、更に低いものとなります。
日経平均に対して劣る成績となっているのは由々しいですね。日経平均のインデックスファンドで良いのではないでしょうか。
配当を貰うよりも、結果的にはオーバーパフォームしそうです。
日本株アルファ・カルテットまとめ
日本株アルファ・カルテットは日本株アクティブ運用、高金利通貨取引、カバードコール戦略を織り交ぜて、複雑な運用を行っていますが、成績は税引前配当金再投資後の成績でも日経平均に劣っています。
また配当利回りは11%と高いですが、明らかに元本を取り崩して配当を行っています。
複利運用の妨げになっているだけでなく投資家に払わなくてもよい税金を払わせており、客寄せパンダの為に非合理的な配当金を拠出している投資家目線にたった投資信託と評価することは出来ません。